M&Aによって株価はどう変動する?上昇・下落する理由とそれぞれの事例を紹介

M&Aの実施は株価にも影響を与えることがあります。自社株を売却する予定がある方や、保有する株式の発行会社に合併等の話が持ち上がったときは、事前にM&A後の株価変動についても予想を立てておくことができるでしょう。どう変動するのか、上昇時・下落時に見られる理由について解説します。

 

M&Aによって株価はどう動く?

M&Aにはさまざまな種類があり、また、M&Aの数だけ事情があるものです。そのため「M&Aをすると株価が上がる」というように断言することはできません。実際のところ、株価が上昇するケースもあれば、反対に下落することも珍しくないでしょう。

しかし、おおよその傾向はあります。まずは基本として次の2点を覚えておきましょう。

 

  • 売却側の株価は上昇しやすい
  • 買収側の株価はケースバイケース

 

売却側の株価は上昇しやすい

M&Aにおいて、事業売却をする側の株価は上昇しやすいものです。そのため、保有する株式の発行会社が第三者的企業に買収されるという話を聞いたときは、M&Aが終わるまでは株式を手放さないほうが賢明でしょう。

とりわけ次の3つの状況下では、株価は上昇しやすくなります。

  • 買収側がM&Aを強く希望しているとき
  • 買収側の知名度が高いとき
  • 敵対的買収が実施されたとき

 

買収側がM&Aを強く希望しているとき

売却側の要望というよりも買収側の強い要望によりM&Aが実現する場合、M&A完了後には売却側企業の株価上昇が予想されます。買収側は「どうしても欲しい」という気持ちを示すために、実際の企業価値よりも高額な価格を提示するでしょう。

売却価格と企業価値との差は売却企業にとっては利益となるため、会社の資産が増え、株価にも反映される傾向にあります。

買収側の知名度が高いとき

有名企業が買収を実施する場合、売却側の企業はM&A後は有名企業の傘下企業となります。元々収益率が低い場合でも、有名企業の豊富な財力を使って大規模運営を実施し、収益率の改善や売上の大幅増を期待できるかもしれません。

このような期待値が株価にも反映され、M&A後あるいはM&A前であっても株価上昇することがあるでしょう。

敵対的買収が実施されたとき

株式の買い占めを進めることで、相手企業の同意を得ないまま買収を進めることを「敵対的買収」といいます。敵対的買収を行うためには、株式を買い進めて行かなくてはいけません。

大量の株式を購入すると「需要増」と市場では判断されることになり、株価上昇につながります。M&A完了後の予測は難しいですが、買い占め過程では株価が上昇することが多いでしょう。

 

買収側の株価はケースバイケース

事業売却は売却先がなくては成立しません。つまり、第三者的視点で判断すれば、企業を買収するだけの価値がある会社ということを意味するため、M&A前後は売却側の株価は上がりやすいでしょう。

しかし、買収側の株価は一概にはいえません。買収する相手の企業規模が小さいときには株価に何の影響も及ぼさない可能性もあり、買収によって現金資産が減ったことネガティブに評価されて、株価が下落するケースもあります。

業績上昇が見込まれると株価も上昇

M&Aにより、買収側の業績が上昇するだろうと見込まれるときは、株価が上昇しやすくなります。投資家たちは「業績が出てからでは株価が高くなるので早めに買っておきたい」と考え、早いうちから、場合によってはM&A前に購入するかもしれません。

もちろん、本当に業績が上昇した後は、さらに株価が高くなることもあります。

投資家の期待値の低いM&Aでは株価は下落

M&Aによって企業が受けるであろうメリットがどのようなものなのか判明しないときや、業績向上につながるとは予想されないときは、反対に株価は下落する可能性があります。企業を買収するということは、その分、資産を減らしたということになるので、余程のメリットがないときには買収側にとってはマイナス要素にしかなり得ないからです。

また、M&Aの買収価格が適正ではないときも、買収側の株価は下落の傾向にあります。買収にかかった高額な費用を本当に回収できるのかという疑問も、株主たちにとっては不安要素になるでしょう。

 

【M&Aによる株価変動の事例】売却側

M&Aを実施すると、売却側の株価は上昇する傾向にあります。しかし、上昇するケースと比べると数は少ないですが下落する場合もあるため、どの程度の価格で売却されるのか、また、買収側の企業はどのような目的で買収するのかについてM&A前に調べておくようにしましょう。売却によって株価が上昇した例と下落した例をそれぞれ紹介します。

上昇の事例:三菱電機

三菱電機は2003年以来、半導体部門を分社化して切り離し、日立製作所やNECエレクトロニクスなどとの合併・統合を行っています。いずれも同じ業界内でのM&Aであることから、業界内競争力の強化という目的が明確で、投資家から期待を集める結果となりました。

また、実際に業績も伸ばして、リーマンショックの影響もほとんど受けずに株価を伸ばしています。

下落の事例:日立製作所

日立製作所では、コンスタントに利益を計上していた日立キャピタルや日立物流の株式を2016年に一部譲渡しました。日立キャピタルも日立物流もいずれも経営に問題があったわけではないにもかかわらず「譲渡した」という事実が投資家に「何かあるのでは?」不安を与え、親会社である日立製作所の株価下落につながっています。

 

【M&Aによる株価変動の事例】買収側

事業を売却するとき以上に複雑なのがM&Aによる買収前後の株価です。買収することで企業の現金資本は一時的に減少しますが、それ以上に業績が上がると考えられる場合は投資家たちの期待を集め、株価上昇という形になって現れることもあります。企業買収することで株価が上昇した例と下落した例について見ていきましょう。

上昇の事例:RIZAP

RIZAPは、M&Aを繰り返すことでも事業を拡大してきた企業です。ジーンズメイトや堀田丸正などの企業買収を行い、2017年の3月末日と11月末日の株価を比較するとおおよそ7倍もの上昇を見せました。

しかし、買収によって2018年後半からしばしば大幅な下落が見られています。2021年には買収前の基準にまで下がっているので、今後も注目していく必要があるでしょう。

下落の事例:パナソニック

パナソニックは、2009年に三洋電機を子会社化しました。その後、ビジネスの統廃合を行ったことにより支出が増え、利益が上がりにくい状況に陥ります。

また、三洋電機から取得した太陽発電事業やリチウムイオン電池事業などののれんの処理のために減損損失が生じ、三洋電機を買収する前よりも株価が大幅に下落しました。

 

M&Aについてのお悩みはご相談ください

中小企業のM&Aでも株式の譲渡額は、変動します。未公開株であれば尚更、その時々の市況や買収相手の意図や意欲によって影響されるでしょう。

オーナー経営者にとっては株式の譲渡額は非常に重要なポイントです。企業価値の試算や、

M&Aに関するお悩みはぜひ弊社にご相談ください。お客さまの立場に寄り添い、最善の結果を目指してサポートいたします。

 

関連記事はこちら