廃業と倒産、何が違う? ~廃業の前に第三者承継(M&A)という選択肢を考える~

■はじめに

「廃業」「倒産」など、店を畳む、事業継続を止めるといった意味合いで使う言葉は複数ありますが、それぞれの言葉の意味は異なります。

この記事では、廃業と倒産の現状とともに、言葉としての「廃業」と「倒産」の違いを説明します。

また近年では、「廃業」を避けるために「M&A」という手法がとられるなどの動きもあります。廃業を選択する際の注意点も同時に解説するので、ぜひ参考にしてください。

■廃業・倒産の現状

まずは、休廃業、倒産の状況ですが、2020年1月の東京商工リサーチの発表によると、2019年の休廃業した企業は全国で4万3,348件で、前年から7.2pt減。2016年に4万件を超えてから4年連続での4万件超えという水準を保つ結果となっています。

一方で、企業倒産件数は8,383件となっており、前年比では1.8pt。

休廃業企業と倒産企業を合計すると5万1,731件にのぼり、全企業358万9,000社の実に1.4%が2019年に市場から撤退・消滅したことになります。

ちなみに、休廃業企業の代表者の年齢をみると、70代以上が約40%で、60代以上でみると83.5%にもなります。代表者の高齢化による影響(健康不安など)が休廃業を加速する要因になっていることがわかります。

また、2019年では企業の61.4%が当期純利益が黒字だったことを踏まえていると、閉じる必要のない企業も多く、後継者不足という状況もうかがい知ることができます。

いずれにしても、望まぬ廃業が増えているという状況は変わりありません。

■廃業とは?

廃業とは、会社の経営者が自主的に会社を閉じること。具体的には、法務局への法人登記を抹消する手続きを行うこと、を言います。

「自主的に」というところがポイントで、業績やキャッシュフローの悪化などによる事業継続の断念を余儀なくされる、というわけではありません。

自ら選択して会社をたたむことを指します。上の東京商工リサーチの数字にもありましたが、赤字でなくても廃業はありうるのです。そして、廃業する理由として多いのは、高齢化が背景にあり、「健康不安」や「後継者がいない」ということが背景にあります。

 

■倒産とは?

倒産という言葉は法律用語ではありませんが、一般的には業績やキャッシュフローの悪化、不振等で経営が行き詰まり、事業継続が困難になった状態を指します。要は、債務が膨らみ、支払いが出来なく、経営破綻した状態です。

 

ちなみに、破産という言葉がありますが、こちらは法律で定義されており、清算を目的とした債務整理手段のひとつです。債務超過などで経営の継続が困難になった会社は、破産手続きを行うことで原則的に資産とともに負債が清算されるようになります。

 

倒産は、経営が破綻した状況であり、破産は、そのなかの清算を目的としたひとつの手段であるため、倒産と破産はイコールではありません。
倒産した場合の選択肢は、破産だけに限定されず、たとえば民事再生、会社更生を行うなどの可能性があります。
なので、破産した会社は倒産しているとはいえますが、倒産した会社は破産しているとはいえないのです。

 

■廃業と倒産の違い

これまでみてきてお分かりのとおり、廃業と倒産違いは、その原因が、内的な経営者の意志にあるのか、業績などの外的な環境が要因となっているのか、にあります。
廃業は業績云々ではなく、経営者自らの意志によって決断めるものであり、倒産は逆に業績やキャッシュの状況など外的要因によって、継続を強制的にストップせざるを得ない状態です。

 

 

■廃業する前にM&Aの選択肢を検討しよう

廃業、倒産ともにネガティブなイメージがつきまといますが、内容は全く異なります。

倒産は、事業継続自体が困難な状態、誰が引き継いでも継続できない状態にありますが、廃業の場合には違います。

業績的に問題のない会社であれば、廃業を予定していても、引き継ぐ人さえいれば、事業継続は可能です。
しかしながら、後継者がいない=継続できない、と考える人はまだまだ多く、望まぬ廃業が増えているということが問題なのです。

これまで残ってきた事業には価値があり、価値があるからこそ残ってきているのだと思います。必要とされる事業が「後継者がいない」の一言でなくなるのはとても寂しく、口惜しいことです。

経営者の周りにはいなくても、全国には価値を感じ、意思を引継ぎたいという人はいるかもしれません。
廃業を決めてしまう前に、M&Aという選択肢についても検討してみるとよいでしょう。

執筆/事業承継通信社 柳 隆之

関連記事はこちら