キャピタルゲイン税とは何か?各国の実情とアメリカでの問題について

キャピタルゲイン税とは、金融商品などを売却して得たキャピタルゲインに対して発生する税金のことです。日本では譲渡所得に相当し、株式などを売却した利益に対して発生します。海外と比べて日本は割高な税率なのか、また、今後どのように税制度が変わると予想されるのか見ていきましょう。

キャピタルゲイン税とは?

キャピタルゲイン税とは、主に有価証券などを売却して得た所得(=キャピタルゲイン)に対して課せられる税金のことです。キャピタルゲイン課税と呼ぶこともあります。

ところで、有価証券を使って得られる所得はキャピタルゲインだけではありません。保有していることで得られるインカムゲインがあります。例えば株式を保有していると得られることがある配当金や、投資信託の保有により得られることがある分配金は、インカムゲインの一種です。

日本では譲渡所得に対する課税に相当

キャピタルゲイン税という名前の税金は、日本には存在しません。しかし、日本においてもキャピタルゲインに対する課税はあります。例えば株式や投資信託を売却したときに得た所得は「譲渡所得」と分類され、税率は20.315%(所得税15%+復興特別所得税+0.315%+住民税5%)です。

なお、キャピタルゲインに対しては税率は一律ですが、一般の所得に対しては累進課税制度が適用されるため、課税所得額が高額になると税率も高くなり、税額も高額になります。以下の表を参考にしてください。

課税所得額キャピタルゲイン税一般の所得に対する税金
100万円20万3,150円15万1,050円
500万円101万5,750円108万4,522円
1,000万円203万1,500円280万1,044円
2,000万円406万3,000円731万3,284円
3,000万円609万4,500円1,239万7,284円

※キャピタルゲイン税に関しては、一律20.315%(復興特別所得税と住民税を含む)で算出しています。
※一般の所得に対する税金は、それぞれの税率で所得税を求め、復興特別所得税(所得税の2.1%)と住民税(課税所得額の10%)を加えて算出しています。

この表からも、日本のキャピタルゲイン税は一般の所得に対する税金よりも低いことが分かります。特に課税所得額が多くなればなるほど差は顕著です。

3000万円の収入を株式売却益で得るのと、所得として得るのでは、税金では実に2倍以上の開きがあることが分かります。

各国におけるキャピタルゲイン税の実情

 

国ごとにキャピタルゲインに対する税制や税率は異なります。日本やその他の国の現状について見ていきましょう。なお、いずれも2019年1月時点の制度です。

日本

日本ではキャピタルゲインに対しては申告分離課税方式が採られています。他の所得額とは無関係に一律20.315%の税率です。また、源泉徴収ありの特定口座を証券会社で開設し、その口座内で取引を行っている場合は、自動的に徴収されるため、確定申告や別途納税する必要はありません。

アメリカ

アメリカでは、給与所得や配当所得などの他の所得にキャピタルゲインを合算して税金を計算する方式が採用されています。家族構成によっても制度は異なりますが、単身者の場合、全体の所得のうち39,375USドル以下の部分に対しては0%、39,375USドル超434,550USドル以下に対しては15%、434,550USドル超の部分に対しては20%の税率です。

また、この税率は連邦税(国税)のもので、それとは別途に州・地方政府税が加算されますが、税率は地域によって異なります。富裕層が多いとされるカリフォルニア州やニューヨーク州では連邦税と州・地方政府税を合わせると50%を超えることもあると試算されています。

イギリス

イギリスでも、給与所得や配当所得などの他の所得にキャピタルゲインを合算して税金を計算する方式が採用されています。全体の所得のうち34,500ポンド以下の部分に対しての税率は10%、34,500ポンド超の部分に対しての税率は20%です。

ドイツ

他の所得と合算した金額において25%以下の税率が適用される場合には、申告を行うことで総合課税方式の適用が可能です。ただし、総合課税が不利になる場合は、申告はなかったものとして26.375%の源泉徴収税が適用されます。

フランス

各種控除適用後、利子などを含む所得が801ユーロ以下の場合は非課税となります。非課税でない場合は一律30%の分離課税か、17.2~62.2%の総合課税を選択することが可能です。なお、いずれにおいても社会保障関連諸税(17.2%)は含まれています。

 

アメリカのキャピタルゲイン課税が問題に!

2021年4月22日、アメリカのバイデン大統領がキャピタルゲイン課税の増税を検討しているとのニュースが流れました。所得が100万USドルを超える富裕層に対しては、現在の連邦税率20%から39.6%へとほぼ2倍に引き上げると報道されています。

バイデン大統領は選挙期間中に「キャピタルゲイン税の増税」や「富裕層への増税」を公約のひとつに掲げていたため、公約通りの対応ということはできるでしょう。しかし、富裕層からは大きな反発が上がっています。

ニューヨーク州では税率50%超と試算

連邦税におけるキャピタルゲイン税の最高税率が39.6%となると、州・地方政府税を合算すると税率が50%を超える地域も生じます。実際にニューヨーク州では58.2%、カリフォルニア州では51%になると試算されており、実施されれば富裕層に大きな負担を強いることになるでしょう。

増収分は育児や幼児教育へ投入

増収分は、幼児教育や子育て支援に投入することが予定されています。こちらも公約に掲げられていた通りです。育児・幼児教育への支援には1兆USドル規模の資金がかかると試算されており、キャピタルゲイン課税を増税するかどうかに関わらず、大幅な増税は必至といえます。

経済衰退につながる可能性も

キャピタルゲイン課税があまりにも高税率になることで株式取引が減少し、投資規模の縮小、ひいては経済全体が衰退するのではという懸念も指摘されています。また、富裕層が州・地方政府税の低い地域へ流出することなども想定されるでしょう。

日本で同様のことが実施されるとどうなる?

アメリカでは個人による株式取引が活発に行われているため、キャピタルゲインに対する税率が上がることに対しての反発が大きい傾向にあります。一方、日本ではアメリカほど個人による株式取引が活発に行われているわけではないため、実際にキャピタルゲインに対する増税が実施されたとしてもダメージは局所的になると考えられるでしょう。

また、そもそも富裕層自体がアメリカと比べて少なく、富の偏りが顕著ではありません。そのため、今回検討されているような富裕層をターゲットにしたキャピタルゲイン課税の増税は、日本で実施される可能性は低いと見ることができるでしょう。

事業譲渡・株式譲渡についてご検討の際はぜひご相談ください

日本では、株式売却に課せられる税金は低く、その額が大きくなればなるほど、所得にかかる税金との開きが大きくなります。

上記の表に従った場合、3000万円の役員報酬を10年間もらい続けるのと、株式売却で3憶円を得るのでは、同じ3憶円でも6000万円~7000万円ほど株式売却のほうが手元に残る額が大きくなります。

アーリーリタイヤをしたい、次の事業を新しく始めたい、事業に疲れた、など会社を手放すにはいろんな理由があるかと思いますが、株式売却は将来に投資するための資金を集める効率的な手段にもなりえます。

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