種類株式を相続対策に活かす方法とは?種類別に具体例を紹介

株式会社が異なる性格の株式を発行すると「種類株式」と呼ばれます。種類株式を相続問題を回避するために用いることや、事業承継の際に活用することも少なくありません。どのような種類があるのか、またどのように活用するのかを本記事では具体的に解説していきます。

 

種類株式とは?

種類株式とは、通常の株式とは異なる性格を持つ株式のことです。

本来ならば、株式はすべての株主において平等で、株式の数に応じて権利が増えます。しかし、種類株式は普通の株式とは異なり、平等な権利があるとは限りません。優先的に配当を受け取れたり、名義人以外の人に譲渡できなかったりと、独自の権利や制限がついています。

 

9つの種類株式と相続対策

種類株式は、ついている権利や制限によって9つの種類に分けることが可能です。なかには相続の際に有効活用できるものや、資金調達に役立つもの、企業を合併させるときに活躍するものなど様々な性格のものがあります。種類株式の性格とそれぞれの活用法、また、相続対策にどのように活かせるのかについて見ていきましょう。

 

1.余剰金の配当規定付き株式(優先株式、劣後株式)

余剰金の配当を普通株式よりも多く受け取れるものは「優先株式」、通常よりも少ないものは「劣後株式」です。優先株式は、例えば資金調達の場面で使用されます。通常よりもメリットがあるため、投資家にとっては魅力的な株式となり、短時間で資金調達しやすくなるでしょう。

経営者が自社の株式を購入する場合は、劣後株式を発行して、ほかの株主の利益を損ねないようにすることがあります。配当を減らすだけでなく「配当なし」に設定することも少なくありません。

2.残余財産の分配規定付き株式

会社を解散する際に生じる残余財産に対する権利が通常とは異なる種類株式もあります。投資家にとっては魅力的な条件のため、発行することで資金調達しやすくなるでしょう。

反対に、残余財産の分配を受けられないという条件を定めた種類株式もあります。こちらも配当についての規則を定めた株式と同様、会社のオーナーなどが取得することが一般的です。

3.議決権制限株式

本来、株式を1つ保有していると議決権も1つ保有することになります。株式を多く持っていると議決権も増えるため、会社に対して持つ影響力も増えることになるでしょう。

特定の議題については議決権がないものや、すべての議題について議決権がないものもあります。ただし、このように議決権を制限する株式を多数発行すると、特定の株主が会社を私有化する恐れが生じてくるでしょう。そのため発行量に制限があり、企業の私物化を回避するようになっています。

4.譲渡制限株式

株式の中には譲渡制限がついているものもあり、自由に売買したり相続したりできないものもあります。譲渡制限株式を誰かに譲渡する際には、会社の承認を得る必要があり、会社は譲渡を認めないという選択を取ることも可能です。

この株式を発行することで、敵対的買収のようにいつの間にか会社が乗っ取られてしまうといった状況を回避することができます。また、創立に携わった人以外の株式を譲渡制限株式にするならば、会社が成長して株数が増えたとしても、経営権を創立関係者だけで確保することもできるでしょう。

5.取得請求権付株式

上場株式は市場でいつでも取引をできますが、非上場株式は買い手がいないと売却することができません。また、発行した会社が買い取ってくれるとも限らないので、資産価値が低くなることもあります。

取得請求権付き株式は会社に取得を請求できる株式で、株主は現金化しやすくなります。なお、買取は現金とは限りません。新株予約権など、事前に対価として適当と思われるものを規定しておくことが可能です。

6.取得条項付株式

「特定の条件を満たすときに会社が株式を取得できる」と定めた株式が、取得条項付き株式です。例えば「会社が上場したとき」などと条件を定めるならば、上場後は幅広く第三者から資金調達しやすくなるでしょう。

事業承継をスムーズに行うためにも利用できることがあります。例えば経営者が取得している株式を「経営者の死亡」の取得条項付きにするならば、スムーズに相続が進むでしょう。

7.全部取得条項付株式

取得条項付株式の中でも、「特定の条件を満たすときに会社がすべての株式を取得できる」と定めた株式を全部取得条項付株式と呼びます。減資を行いたいときや、特定の株主を排除したいときに用いることができるでしょう。

ほかの種類株式と比べても権限が多いため、専門家に相談して慎重に発行手続きを行う必要がある株式です。

8.拒否権付株式

特定の事項に関しては拒否権を発動できる種類株式もあります。この株式を発行し、なおかつ特定の事項に対する議決を取らなくてはならないときは、株主総会とは別に種類株主総会を開催しなくてはいけません。

例えば役員の選任に対して拒否権を持つ株式であれば、好ましくない人が役員に就くのを妨げることができます。敵対的買収を避けたい場合や、引退後も経営に対して影響力を持ちたいときなどに利用することができるでしょう。

9.役員選任権付株式

役員を選任する権利がついた種類株式もあります。通常の株主総会以外に種類株主総会を開催しないと役員の選任ができない点に注意が必要です。

拒否権付きの種類株式と同様、役員選任権付きの株式も、事業承継に用いられるケースが少なくありません。引退後も経営が軌道に乗るまで後継者をサポートしたいときなどに利用することができます。

 

種類株式の発行手続き

種類株式を発行するには、新たに種類株式を発行する、もしくはすでに発行した株式を種類株式に変更するの2つの方法があります。新たに種類株式を発行する場合は、以下の手順で手続きを行いましょう。

  1. 定款変更の特別決議を行い、種類株式発行会社になる
  2. 種類株式を発行する

特別決議は議決権の過半数が出席し、なおかつ出席した議決権の2/3を超える賛成を得ることが必要です。一方、すでに発行した株式を種類株式に変更する場合は、変更後の種類によって手続きの内容が異なります。例えば全部取得条項付き株式を発行する場合には、種類株式発行会社になる際と同様に特別決議が必要です。

 

発行・種類変更後は登記が必要

種類株式を新たに発行した場合は、もしくは普通株式等を種類株式に変更した場合は、以下の内容を登記する必要があります。

  • 発行済みの株式の総数
  • 発行可能な株式の総数
  • 発行可能な種類株式の総数
  • 種類株式の種類

種類株式は会社の経営に大きく影響を与えることもあり、発行や変更の手続きは複雑で、手間がかかることが多いです。また、会社が一方的に利益を得るのではなく、株主も利益を得られるように配慮した条件をつける必要があります。

 

事業承継やM&A時のお困りごとは相談を

種類株式を活用することで、事業承継やM&Aをスムーズに進めることができます。しかし、種類株式の発行や変更は手間がかかり、どのような状況を想定してどのような種類株式を選ぶのかも安易に決定できることではありません。

最適な種類株式を選ぶためにも、また、事業承継やM&Aをスムーズに進めるためにも、ぜひお困りごとをご相談ください。経験豊富な専門家がお客さまの状況に合わせてサポートいたします。

 

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