【M&A事例】まつエクサロンの事業譲渡|REM株式会社 加賀﨑彰人氏インタビュー
不動産業を展開しながら、数年前にまつエクサロンの事業を買収。その後、コロナを経て、改めて事業の一部を売却するに至ったREM株式会社の加賀﨑彰人社長にお話を伺いました。
異業種からまつエクサロンを買収するに至った背景、異業種ならではの悩み、コロナ禍でのM&Aなど、事業売却に至るまでの経緯を具体的にヒアリングしています。
ーまずは加賀﨑様のご経歴を簡単に教えてください
もともと新卒の時は、賃貸管理の会社にいました。
27歳で大学院でMBAを取得した時に、不動産投資の方の話に感銘を受けまして、現在は不動産業をメインにやっていて、主に投資物件を扱っています。
ー不動産業をやりながら、なぜ「まつエクサロン」の事業を始めたのですか?
ある時に、弟と何か一緒に事業をやろうという話になったんです。
弟は皮膚科で美容系のクリニックをやっていたので、自ずと美容系の話になったのですが、例えば「美容サロン」などでは、ヘアスタイルの仕上がりにセンスが必要とされるので、良い悪いの判断が素人の自分には難しいと。
ただ「まつエクサロン」ならば、顧客のニーズも美容サロンに比べたらもう少しシンプルだし、スピードなど求められることが判断できるかなと。
あとは、経営的に原価が安くて利益が出やすいという点で、「まつエクサロン」の事業を検討することにしました。
ーどのように事業を始められたのですか?
2019年に商工会議所の方に紹介してもらって、売却に出ているサロンの話があるということで、検討から3か月ぐらいで決めたと思います。
当時はまだコロナ前だったので、かなり利益もありましたね。
ー譲り受けてからはどうでしたか? どのようなことに苦労しましたか?
先ほど美容サロンよりもシンプルとお話しましたが、それでもやはり自分の知らない業界で、トレンドが分からない。最先端のものを提供したいけど、自らキャッチしないといけない。
女性スタッフだけの世界で話ができるようにしないといけない…など、とにかく『知る』ということは難しかったですね。お客さんだけでなく、同時に従業員の理解も得ないといけないわけなので。
自分が知らない業界で、それをプロの従業員にどう想いを伝えていくのか。
例えば、アイブローの研修を従業員に受けてもらいたいなと思っても、そもそも研修の意義が分かってもらえなかったり、研修を受けてもサービスに反映することに抵抗があるスタッフがいたり。
経営者としては、「研修で技術を学んだのだから、当然サービスにも反映してもらいたい」というつもりだったのですが、伝え方の問題もあり、気持ちが下がるスタッフも出てきてしまって。
修復しようとミーティングをしたり、飲みの場を作ったりしようとしましたが、コロナ禍なので連れ出すわけにもいかず…。そんなこともあり、なかなかコミュニケーションの部分がうまく出来なかったですね。
一方良かったことといえば、畑違いのことをすることで視野が広がりました。美容業界は全く自分の知らない世界でしたが、今まで気にしていなかった美容系のトレンドなども気にするようになりましたし。
また店舗事業をやったことで、不動産を借りる側の人の立場も理解できるようになったと思います。
ーそんな中で事業の一部を売却するきっかけはどのようなところにあったのですか?
事業として新たに「お酒の輸出入」を始めることになったのですが、そちらにも労力が必要になり、サロン事業に関われる時間が制限されると思ったからです。
先にもお話した通り、コミュニケーションの部分で修復も必要な状態でしたから、このままサロン事業に時間が割けなくなれば、より一層スタッフと心が通わなくなり、うまくいかなくなるだろうなと。
スタッフの気持ちがついてこないと、良いサービスは提供できませんから。お店のことも考えて、2021年の末ぐらいに売却を考え始めました。
ー売却はどのようなプロセスで始めましたか?
信頼できる先輩からの紹介で、事業承継通信社に行きつきました。
たくさんM&A仲介の会社はありますが、広げて話すよりも情報管理の面でも1社に絞ったほうがやりやすいと思ったので、1社にお任せする形にしました。
ーなぜ事業承継通信社に任せたのでしょうか? 何か決め手はありましたか?
しっかりと見てくれている感じがしたことです。
具体的に言うと、会社や事業、状況を知るために要望される資料が非常に細かかったんですね。会社をより詳しく知るためにそういった要望が出されるわけなので、そこは逆に信用できましたね。
反対に雑に求められると、後々そんなことは聞いてないとか、知らないとかトラブルになる可能性があるじゃないですか。
不動産でもM&Aの業界でも、実際にブローカーみたいな人はいるので、そういう横に流すだけの人だと信用できない。そういった意味で、最初からちゃんと細かく会社を見ようとしてくれていたということですね。
ー実際はコロナもあって進むのが難しい部分もありましたが、不安などはありましたか?
十数人と会っても、コロナで動向が読めずに買手候補が躊躇することもあり、なかなか進まない場面もありましたが、売上を維持できれば借入金も減っていくし、不安になったり困ったりすることはなかったですね。
時間はかかっても、いつかは折り合いがつくのではないかと思っていました。不動産と同じで、売りに出してすぐ売れるものではないし、気長にやっていればいつかは見つかるだろうと。
ー事業を売却する候補先としてイメージしていたことはありますか?
まず第一にスタッフと心が通える人じゃないと絶対にダメだと思っていました。なので、事前にスタッフとの面談の機会を設けて、売却のことは言わずに話をしてもらいました。
今回、売却を決めた相手先の方と話したときに、スタッフがすぐに笑顔になっていたのを見て、この人だと思いましたね。
経営者は自分で施術やサービスをするわけではありませんが、社員には施術やサービスに対してモチベーションを高く持ってもらわないといけないので。そういう意味で、スタッフの気持ちを理解して、勇気づけてくれるような人がいいと思いましたね。
トップ面談もしましたが、事業の売却だけでなく、事業の将来のことを考えて候補先を探していたので、そこは妥協せずにできたと思います。
買手先が「買って良かった」と思えないと、事業は続かないですからね。
ー今回の事業売却で苦労したことはありますか?
お任せしてたので、特にないですね。
スタッフにも事前に会ってもらっていたので、オーナー変更もスムーズでした。
ー今後、売却した事業に期待することはありますか?
お任せするので絶対はないですが、最先端の施術を受けられる店であってほしいなと思いますね。
ー加賀﨑様ご自身は、今後はどうされるのですか?
お酒の輸入を始めるので、まずはそちらに注力します。今までにない新しいものを提供していこうと思っています。個人的にウィスキーが好きなので、日本では手に入らないものを売りたいなと。
自分の視野が広がるような、知らない分野をやることが好きなので、これからもチャレンジしていきたいと思っています。
インタビュー:株式会社事業承継通信社 若村雄介・柳 隆之 執筆:柳 隆之