
エクイティ・ファイナンスとは?仕組み・手法・メリット・デメリットを詳しく解説
エクイティ・ファイナンスとは、株式を発行することで返済不要の資金を調達する手法です。企業の自己資本を強化し、財務体質を安定させる方法として注目されており、特に成長段階にある企業や新規事業に取り組む企業が多く活用しています。この記事では、エクイティ・ファイナンスの仕組みから主な手法、他の調達方法との違い、そしてメリット・デメリットまでを詳しく解説します。
CONTENTS
エクイティ・ファイナンスとは?
エクイティ・ファイナンスは、企業が新たに株式を発行し、その株式を投資家に引き受けてもらうことで資金を調達する方法です。得られた資金は企業の自己資本として組み込まれ、借入とは異なり返済義務が発生しません。
株式の発行によって調達された資金は、主に資本金や資本剰余金として計上されるため、企業の財務体質を強化し、自己資本比率の向上にもつながります。エクイティ・ファイナンスの具体的な特徴やメリット・デメリットについては、後ほどで詳しく解説します。
「エクイティ」の意味とは?
「エクイティ(equity)」とは、一般的に「株主資本」または「自己資本」を指す言葉です。これは、企業の総資産から負債を差し引いた残りの部分、すなわち株主が企業に対して持つ持分全体を意味しています。
似たような用語として「ストック(stock)」がありますが、こちらは株式そのものを指すのに対し、エクイティは株式を通じて形成される資本、つまり企業の財務的な基盤を強調する概念です。そのため、エクイティ・ファイナンスは単に株数を増やすのではなく、企業の資本金や純資産を増やす資金調達方法といえます。
デット・ファイナンスとの違い
エクイティ・ファイナンスと対比されるのが、銀行融資や社債発行などによって借入を行う「デット・ファイナンス」です。これは、企業が負債という形で資金を得る方法であり、調達資金には必ず返済義務と利息の支払いが伴います。
例えば、社債を発行した場合には、企業は決められた償還日に元本を返済し、それまでの期間に利息を支払わなければなりません。銀行からの借入も同様に、定期的な返済義務が生じます。
一方、エクイティ・ファイナンスで調達した資金には返済義務がなく、企業の自己資本に組み込まれることで自己資本比率が向上します。これは財務の安定性を高めるだけでなく、金融機関や取引先からの信用力向上にもつながります。
エクイティ・ファイナンスの主な4つの手法
エクイティ・ファイナンスは、株式をどのような形で投資家に引き受けてもらうかによって手法が異なります。ここでは、代表的な4つの方法をご紹介します。
- 公募増資(Public Offering)
- 株主割当増資
- 第三者割当増資
- 新株予約権付社債(CB)の発行
1.公募増資(Public Offering)
公募増資とは、証券会社などを通じて不特定多数の投資家を対象に新たな株式を発行し、広く資金を募る方法です。英語では「Public Offering」と呼ばれ、略して「PO」と表現されることもあります。
上場企業がこの手法を活用する場合、株価や市場動向に応じて発行価格やタイミングを調整することが可能であり、特に株価が高いときには少ない株数でも多額の資金を調達できます。
2.株主割当増資
株主割当増資とは、既存の株主に対して持ち株比率に応じた新株引受権を与え、資金を調達する方法です。上場・未上場を問わず利用可能ですが、未上場企業が広く投資家を募る手段として活用することが多くなっています。
株主は割り当てられた株式をすべて購入する義務はなく、一部だけを引き受けたり、辞退したりすることも可能です。企業にとっては既存株主との信頼関係を活かした安定的な資金調達が可能ですが、株主の資金的余裕によっては調達額に限界がある場合もあります。
3.第三者割当の増資
第三者割当増資とは、特定の第三者に対して新株を発行し、資金を調達する方法です。対象となるのは、提携先企業やベンチャーキャピタルなど、企業と戦略的関係を築きたい相手であるケースが多く見られます。
この手法では、既存株主の保有比率が下がることで経営権に影響を及ぼす可能性があります。特に発行株数や割当先の持株比率が高い場合は、経営陣の支配構造に変化が生じることもあるため、慎重な判断が求められます。
4.新株予約権付社債(CB)の発行
新株予約権付社債(Convertible Bond、通称CB)は、社債としての性格を持ちながら、将来的に株式に転換できる権利(新株予約権)が付与された金融商品です。
この仕組みによって、当初は負債として扱われるものの、投資家が転換権を行使した時点で株式となり、企業の自己資本として組み込まれます。つまり、資金調達の段階ではデット・ファイナンスの要素を持ちつつ、最終的にはエクイティ・ファイナンスとして機能する点が特徴です。
エクイティ・ファイナンスのメリットとデメリット
エクイティ・ファイナンスにはさまざまな利点がある一方で、注意すべき点も存在します。ここでは、主なメリットとデメリットを整理して紹介します。
【メリット1】返済義務がない
エクイティ・ファイナンスによって調達した資金は、借入とは異なり返済の必要がありません。そのため、企業は資金の使途を柔軟に設定でき、将来のキャッシュフローを圧迫せずに成長投資に充てることができます。
【メリット2】自己資本比率が向上する
株式発行によって得られた資金は自己資本として計上されるため、企業の自己資本比率が上昇します。これは財務健全性の指標となり、金融機関や取引先からの信用力の向上にも寄与します。
【デメリット1】株主の希薄化・反発リスク
新株を発行することで既存株主の持株比率が低下し、1株あたりの価値が薄まる「株式の希薄化」が発生します。場合によっては、既存株主からの反発を招く恐れもあるため、事前の説明や合意形成が不可欠です。
【デメリット2】支配権に影響が及ぶ可能性
特に第三者割当増資を行う場合、新たに株式を取得する第三者の保有比率が高まることで、企業の意思決定に影響が生じる可能性があります。企業経営の独立性を保ちたい場合は、慎重な判断が必要です。
状況に応じて、M&Aも資金調達の選択肢に
エクイティ・ファイナンスは、企業の負債を増やすことなく、財務体質を強化しながら資金を調達できる有効な手段です。しかし、実行までに時間がかかる場合や、株主構成に変化が生じることへの配慮が必要になる場面もあります。
資金調達のスピードや組織再編の柔軟性を重視する場合には、M&Aの活用もひとつの選択肢として検討に値します。企業の成長戦略や経営課題に応じて、最適な手法を選択することが重要です。
なお、エクイティ・ファイナンスやM&Aといった資金調達の手法は、企業の状況や目的によって最適な選択肢が異なります。だからこそ、自社にとって本当に有効な手段を見極めるためには、専門家の知見を交えて検討することが重要です。
「どの資金調達方法が自社に適しているか分からない」「第三者の視点でアドバイスがほしい」とお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。事業承継やM&Aに関する豊富な知見をもとに、最適な方針をご提案いたします。