株主総会の特別決議とは?特別決議の決定内容や普通決議との違いについて解説

株主総会の特別決議とは、企業にとって重要性の高い事案を検討する際に実施される決議です。普通決議とは異なり、議決権の2/3以上の賛成を得られないと決議されないなどの厳しい条件が定められています。特別決議では何を決めることができるのか、また、どんな特徴があるのかについて見ていきましょう。

株主総会の特別決議とは?

重要な事案を決定する際において、株主総会での特別決議が必要になることがあります。特別決議とはその名の通り特別で、普通決議と比較して会社にとって重要な事案の決定の際に用いられる決議です。

特別決議が成立するためには、少なくともすべての議決権全体のうち過半数に相当する議決権を持つ株主が参席することが求められます。出席した株主が有する議決権が全体の過半数に満たない場合は特別決議を取ることができないので注意が必要です。

その上で、出席した株主の議決権のうち2/3以上の賛成を得ることが求められます。これらの条件を満たすと特別決議が成立したとみなされます。

議決権全体のうち過半数に相当する議決権を持つ株主の参席が難しいときなどは、定款変更を行うことで全議決権の1/3以上の割合であれば減らすことが可能です。ただし、定款変更も特別決議が必要なので、議決権全体のうち過半数に相当する議決権を持つ株主が参席したときに決議を得ておきましょう。

普通決議とは何が違う?

普通決議は特別決議よりも重要度が低い事案を決定する際に用いられます。普通決議が成立するためには、少なくとも議決権全体のうち過半数に相当する議決権を持つ株主が参席しなくてはいけませんが、この点に関しては特別決議と同様です。また、定足数の緩和に関しても、特別決議と同様、定款の変更により可能になります。

しかし、賛成が成立する条件は特別決議よりは緩やかです。出席した株主の議決権のうち過半数が賛成すれば、普通決議は成立します。

特殊決議とは?

特殊決議も、特別決議と同様、重要度が高い事案に対しての決議です。成立するための条件は事案によって2つのパターンがあります。ひとつは議決権のある株主の半数以上が出席し、2/3以上の賛成を得ること、もうひとつは総株主の半数以上が出席し、総株主の議決権の3/4以上の賛成を得ることです。吸収合併契約等の承認など、限定的な内容を決議する際に用いられます。

 

株主総会の特別決議で決議する内容

決定する事案により、決議の種類が決まっています。株主総会の特別決議で決議する主な内容について見ていきましょう。

  • 募集株式の募集事項の決定
  • 資本金の減額決定
  • 現物配当の実施
  • 事業譲渡の承認
  • 解散や吸収合併などの決定
  • 役職変更の決定

募集株式の募集事項の決定

非公開会社が発行株式を引き受ける人を募集するとき、あるいは処分する自己株式を引き受ける人を募集するときには、特別決議が必要になります。募集する株式数や金額、計算方法などについての事項を定め、特別決議で承認を受けなくてはいけません。

また、募集株式を獲得する際に必要な金額が、株式を引き受ける人にとって有利な場合は、その理由についても説明します。ただし、公開会社が募集株式の募集事項を決定するときは、特別決議なしに取締役会で決めることが可能です。

資本金の減額決定

株式会社が資本金を減額するときは、特別決議によって減額する金額と効力発生日について決める必要があります。ただし、減額する金額が元々の資本金を超えることはできないので注意しておきましょう。

なお、資本金を増額するときには、特別決議による決定は必要ありません。

現物配当の実施

株式会社では株主に剰余金の配当を行いますが、必ずしも現金で行う必要はありません。しかし、現金以外、つまり現物で配当を行う場合は、特別決議によって決定する必要があります。また、すべての株主に配当を行わない場合は、その基準についても定めなくてはいけません。

事業譲渡の承認

事業譲渡を実施する場合も、特別決議で承認を得る必要があります。例えば事業全部を譲渡するときや一部譲渡、子会社の株式の全部譲渡、一部譲渡などにおいて、特別決議を実施し、規定数以上の賛成を得なくてはいけません。

解散や吸収合併などの決定

吸収合併を実施する場合は、消滅するほうの株式会社において効力が発生する日の前日までに特別決議による承認を得る必要があります。存続するほうの株式会社においては、効力が発生する日の前日までに決議による承認を受けなくてはいけません。

また、新設合併契約を実施する場合も、消滅する株式会社などは特別決議による承認が必要になります。

役職変更の決定

監査役を解任する場合、あるいは投票により選ばれた取締役を解任する場合は、特別決議による承認が必要です。ただし、取締役や監査役、会計参与を選任する場合は、特別決議ではなく特殊普通決議によって承認されます。特殊普通決議とは、過半数の議決権を有する株主が参加し、出席した株主の議決権の過半数の賛成で決定する決議です。

 

特別決議で決議されても実行されないケース

特別決議による承認が必要な事案で、なおかつ参加する株主から賛意を得られた場合であっても、決議された内容が実行されないことがあります。次の2つのケースでは特別決議の事案の実行が難しくなるので注意が必要です。

  • 拒否権を持つ株主がいる場合
  • 黄金株を持つ株主がいる場合

拒否権を持つ株主がいる場合

株主が有することが可能な権利のひとつに、「拒否権」があります。拒否権とはその名の通り、特別決議によって決定した内容を拒否できる権利です。

これは全体の1/3を超える株式を有している株主が行使できる権利で、一旦、特別決議などによって承認された事案であっても、拒否権を有する株主が拒否権を発動すると、決定が覆ることがあります。

黄金株を持つ株主がいる場合

全体の1/3を超える株式を有している株主が存在しない場合であっても、拒否権を行使され、特別決議で承認された事案が覆ることがあります。例えば、「黄金株」を有する株主が存在する場合です。

黄金株とは拒否権付きの株式のことで、たとえ1株であってもその株に拒否権が付いている場合は、特別決議によって可決された内容でも承認を拒否することができます。

なお、黄金株は1株であっても特別決議を覆すほどの効力があるため、発行や譲渡は慎重に行わなくてはいけません。通常は譲渡制限をかけ、黄金株を保有している株主が、特定の人物に譲渡したり相続によって相続人が受け取ったりすることがないようにしておきます。

 

事業譲渡・株式譲渡についてご検討の際はぜひご相談ください

事業譲渡や株式譲渡を実施する場合は、株主総会による特別決議が必要になります。売却を進める際には、このような株主総会での決議やその議事録など証憑きが必要になります。

その他、売却に必要なステップや手続き、書類など、成約に至るまでのプロセスを全てサポートいたしますので、事業譲渡・株式譲渡をご検討のときには、ぜひ弊社にご相談ください。相談料不要、着手金不要でご相談を承っておりますので、まずは一度、お気軽にお問い合わせください。お客様の立場に寄り添い、ご一緒に問題解決に取り組みます。

 

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