『債務免除』は経営改善や相続税対策に実施する行為のこと|メリットや注意点は?

債務免除は主に会社への貸付を免除する行為で、経営状態を改善するときや相続税対策に用いられることが一般的です。実施することで会社の経営状態が劇的に改善されるなどのメリットがあります。そのほかにもどのようなメリットがあるのか、また、知っておくべき注意点についてもまとめました。

債務免除とは?

債務免除とは、無償で債権を消滅させることです。債務者から見れば債務免除ですが、債権者からは債権放棄を意味します。返済すべき負債がなくなることは債務者にとっては好ましいことですが、債権者にとっては通常は何のメリットもありません。

また、一度債務免除に応じてしまうと、後になってやはり債務を免除できないと主張を変えることは不可能です。そのため、債務者・債権者に特別な事情がない限りは、債務免除が起こることはほとんどないと考えられるでしょう。

経営状態を改善するために実施する

一般的には起こることが少ない債務免除ですが、経営者と会社の間においては珍しいことではありません。例えば経営者が会社に融資を実行している場合では、債務免除することで会社の負債が減り、経営状態を改善することができます。また、会社側にとっては、純資産の増加や自己資本比率の増大などのメリットも生じるでしょう。

相続税対策目的で実施することもある

経営者が会社に融資を実行している場合、債務免除することで会社の経営状態を改善することが可能です。

また、経営者にとっても債務免除はメリットになることがあります。債権放棄することにより、経営者は財産を減らすことになるため、相続税を減らすこともできるのです。

例えば会社への債権が3,000万円ある場合、相続が発生する状況を見越して会社への債権を放棄したとしましょう。放棄しない場合には3,000万円の債権も経営者の財産の一部と扱われるため、相続人は3,000万円に対する課税分の相続税も支払うことになりますが、債権放棄している場合は不要です。

事情によっては会社側の経営状態が好転せず、いつまで経っても3,000万円の債務を相続人に返済しない可能性もあります。このような場合には、相続人は返済されない債務に対して相続税を納付したことにもなりかねません。

しかし、債務免除をすれば常に相続税が減るわけではないので注意が必要です。例えば債務免除した金額が会社の繰越欠損金を超える場合、利益が生じたものとして考え、相続税が増える可能性もあります。課税が増えないように実施するためにも、債務免除の際には税理士などの専門家に相談するようにしましょう。

 

債務免除の財務処理

債務免除を実施した場合の財務処理について解説します。経営者が会社側にお金を貸し、債権放棄をした(会社側にとっては債務免除された)状況を仮定し、どのように財務処理できるのか見ていきましょう。

経営者側は財務処理不要

経営者は債権放棄をしたことで利益は得ていません。そのため、特に財務処理することはないと判断できるでしょう。また、経営者個人が貸付を事業として行っているのでない限り、所得税にも影響は出ません。

会社側は債務免除益として仕訳をする

会社側にとって債務免除は、免除された金額分の贈与を受けたことを意味します。利益が出たと考え、「債務免除益」として仕訳をすることができるでしょう。また、債務免除益を繰越損失内に収めることで、法人所得税や事業税などを節税することができます。

債務免除は消費税の課税対象ではない

債務免除による利益は、消費税の課税対象ではありません。債務免除側、債権放棄側にいずれにおいても消費税の支払いは不要です。

 

債務免除のメリットと注意点

経営者が会社に対してお金を貸している場合、債務免除を行うことで会社側にとっては自己資本比率が向上すること、経営者側にとっては相続税を減らせるなどのメリットがあります。

しかし、場合によっては会社側の法人税が増えたり、みなし贈与税が課せられたりするかもしれません。債務免除時のメリットとデメリットについて詳しく見ていきましょう。

メリット1.自己資本比率が向上する

債務免除は会社側にとっては借金の減少です。返済義務がなくなることで純資産が増加し、自己資本比率が向上することがあるでしょう。自己資本比率の向上は、会社にとっては信用力向上を意味します。取引先にとっては安心材料、金融機関にとっては返済能力が高いと判断する材料になることもあるでしょう。

メリット2.社長の相続税を減らせる

債務免除は債権を有する社長にとっては、資産の減少を意味します。会社から融資を返済してもらえる可能性はなくなりますが、自己資産が減ることにより相続が発生したときには相続税を減らすことができるでしょう。特に会社から返済を見込めないときは、債権放棄をして相続人の負担を軽減することができます。

 

注意点1.法人税が増えることがある

債務免除した金額が多く、会社の繰越欠損金を超えてしまう場合には、利益が生じたとみなせるため法人税などが生じる可能性があります。債務免除するときは、繰越欠損金の金額や当期利益と見合わせて金額を調整するようにしましょう。

繰越欠損金と益金を相殺して節税する

債務免除により法人税などが増えないためにも、繰越欠損金から当期利益を差し引いた金額を債務免除した金額が超えないように注意する必要があります。経営者から借りた金額が多い場合には、一度に債務免除を実施するのではなく、何年かに分けて欠損金と相殺できるようにしましょう。

注意点2.みなし贈与が発生することがある

会社に債権放棄を実施した経営者以外の株主がいる場合は、株主にみなし贈与が実施されたと考え、贈与税の納付が必要になることがあります。

例えば、債務超過の状態である会社に経営者が債権放棄を実施したとしましょう。債務免除された金額が大きく、会社の資産がプラスになった場合は、株式にも価値が生まれたと考えられます。つまり、株主にとっては贈与による財産の増加を意味するので、贈与税の支払い義務が生じるでしょう。

このように経営者以外に株主が存在するときは、会社に対して債務免除することが、結果としては株主の税額を増やすことになります。もちろん、みなし贈与のため、株主の財産が増えたわけではありませんが、納税義務のみ増えることになるので注意が必要です。

他の株主の負担を増やさないためにも、会社の繰越欠損金や当期利益、債務超過額などを包括的に考え、債務免除する金額やタイミングを決定するようにしましょう。また、税理士などの専門家に相談することも大切です。

 

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