分社化するべき?分社化する方法とメリット・デメリットについて解説

分社化とは、その文字の通り会社を分けることで、簡単にいえば子会社をつくることです。節税になるだけでなく、事業承継に役立つことや優秀な部門を残し倒産時の損害を抑えるメリットもあります。分社化するときのよくあるパターンと、事前に確認したいポイントについて見ていきましょう。

 

分社化とは会社を分けること

分社化とは会社を分けることです。例えば特定の事業部門だけを切り分けて独立した子会社にしたり、特定のエリアの仕事を専門的に行う独立した子会社をつくったりすることで、分社化を進めていくことができるでしょう。新しくつくった子会社は組織としては独立していますが、親会社の実質的な支配下に置かれることになります。

 

分社化する5つのメリット

会社を新たに設立するためには、手間と時間がかかるだけでなく費用もかかります。しかしそれでも会社がある程度成長して規模を拡大したときは、分社化するほうがよいことも少なくないのです。子会社をつくることで得られるメリットとしては、主に次の5つを挙げられるでしょう。

  1. 節税できる
  2. 交際費の上限額を増やせる
  3. 事業を進めやすくなる
  4. 事業承継の手段として活用できる
  5. 倒産時の損害を抑えることができる

1.節税できる

通常の法人税率は23.2%ですが、資本金額が1億円以下の中小企業の場合、課税所得額のうち、年800万円以下に関しては15%が適用されます。800万円を超えた部分に関しては通常の法人税率が適用されますが、法人税は毎年支払う税金のため、少しでも節税できることは長期的に見れば大きなメリットといえるでしょう。

また、創立後最大2年間は消費税が免除されることがあります。資本金が1,000万円を超えないことなどいくつか条件はありますが、期間内に発生したすべての消費税が免除されるのは大きなメリットです。

2.交際費の上限額を増やせる

中小企業に関しては、年800万円まで交際費を損金算入できます。分社化することで中小法人を増やせば、800万円の法人数倍の交際費を損金に算入でき、節税にもつながるでしょう。

なお、この交際費には取引先などへの接待だけでなく、お中元・お歳暮などの贈答行為にも適用されます。仕事柄、交際費を削ることが難しい事業を運営している場合も、分社化を検討できるでしょう。

3.事業を進めやすくなる

事業規模が大きくなり過ぎると指示系統が複雑になり、業務効率が落ちるだけでなく機動性も落ちることがあります。また、会社の隅々まで目が届かず、不正が起こりやすくなることもあるでしょう。

分社化して事業ごと、あるいはエリアごとに会社を整理すれば、仕事の流れがシンプルになり、業務効率や機動性の向上を期待できます。また、古い体質を一新することで不正の温床を無くし、クリーンな企業へと発展して行けるでしょう。

4.事業承継の手段として活用できる

子どもに会社を継がせる場合や後継者の候補が何人かいる場合は、誰が後継者になるのかで揉めることがあります。また、社長と専務という風に役職で分けた場合も、社長に選ばれなかったことを怨みに思って、その後の業務に差しさわりが生じることもあるでしょう。

誰もが納得できる事業承継を行うためにも、分社化という手段を検討できるかもしれません。会社を後継者候補の数に合わせて設立し、社長として腕をふるうことができる土壌をつくります。

また、後継者候補が力量的に会社全体を経営することが難しい場合も、分社化が役立つことがあるでしょう。会社の規模を小型化し、後継者が運営しやすく調整できます。後継者に経営の才能があるならば、小型化した会社を親会社をしのぐほどに成長させていくでしょう。

5.倒産時の損害を抑えることができる

経営が思わしくなく倒産するという選択をした場合は、優れた成果を上げている部門も廃止されてしまいます。それどころか優秀な部門が獲得した利益を他部署がつくった損失や株主への残余財産の分配に充当しなくてはならず、多大な損害を被るでしょう。

しかし、優秀な部門を分社化しておくならば、経営が思わしくない他部署が廃業の危機を迎えたとしても子会社には影響を与えません。倒産時の損害を抑え、優秀な部門をさらに発展させるためにも分社化を検討できるでしょう。

優秀な社員が揃っている部門を分社化することで、親会社が倒産したとしても人材流出を防ぐこともできます。企業としての生き残りを考える上でも、優秀な部門を子会社化することは意義のあることといえるのです。

 

分社化する3つのデメリット

分社化には多彩なメリットがありますが、実施する前にはいくつか考えておくべきポイントがあります。最初に、分社化することで経営に関わるポストも増えるので、適切な人材がいるかどうかという点を考える必要があるでしょう。その次に、次の3つのデメリットにも留意してください。

  1. 分社時に手間と費用がかかる
  2. 許認可を再度得る必要が生じる
  3. 株主の同意を得る必要が生じる

1.分社時に手間と費用がかかる

子会社をつくるということは部門を1つ増やすのとはわけが違います。新たな会社を設立するので、創業時と同程度の手間と費用がかかるでしょう。また、社屋についても考えておかなくてはいけません。適した不動産を所有していない場合には、不動産選定から購入、内装や設備、備品などを揃える費用もかかるでしょう。

また、分社後も手間と費用がかかります。分社に伴い社員を増やすのであれば人件費が増えることになり、また、会計処理や税務・法務を社外の専門家に依頼している場合は、顧問料や手数料も増えることになるでしょう。

2.許認可を再度得る必要が生じる

事業を進めていく上で必要な許認可は、分社化した際には新たに取得しなくてはいけないものもあります。例えば宅地建物取引業や旅行業の許認可は、新たに設立した企業には承継されないので再申請を行い、取得する必要があるでしょう。

許認可を得て交付を受けるまでには時間がかかることもあります。その間は事業を行うことができず、取引先などに不便をかけてしまう恐れがあるでしょう。

3.株主の同意を得る必要が生じる

分社化をする際には、株主総会で株主の同意を得る必要があります。特別決議と呼ばれる決議で、次のすべての条件を満たさなくてはいけません。

  • 株主の過半数が出席する
  • 出席した株主が有する議決権の2/3以上の同意を得る

分社化に反対している大株主がいる場合は、「株主総会に出席しても同意しない」という行為を繰り返す可能性もあるでしょう。会社の発展あるいは事業承継のために分社化が必要だと考える場合は、子会社をつくることで解決できる問題やメリットについて株主に説明し、時間をかけて説得していくことが必要です。

 

事業の切り分け、事業譲渡の検討の際はご相談ください

分社化によって優秀な部門を守ることや節税、企業としての機動性を高めることなどの多様なメリットを得られます。また、後継者が多い場合の事業承継問題の解決策としても、分社化を用いることができるでしょう。

しかし、分社化を進めることは手間がかかるだけでなく、法律の専門的な知識や経験に基づいた会社分割の知識などが必要になります。ぜひ事業の切り分けや譲渡をご検討の折には、弊社にご相談ください。貴社の状態やご希望に合わせたプランのご提案から子会社設立に至るまでワンストップでお手伝いいたします。

 

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