減損とは回収できる程に資産価値を減らすこと!時期と会計処理を解説

減損(げんそん)とは資産の価値が低下したことで、その投資回収が困難になった際に、帳簿上で資産の価額を減らし、回収できる程度に調整することです。減損するかどうかをどのタイミングで見分けられるのか、また、会計処理の手順について見ていきましょう。

減損とは固定資産の価値を減額させること

減損とは、固定資産の価値を回収できる程度までに引き下げることです。資産の収益性が下がっているときに、帳簿上で投資した額を回収できるようにします。

減損処理では、貸借対照表に記載されている固定資産について、投資によって損失が生じた分だけ帳簿価額を下げます。下げた金額については、損益計算書の特別損失として記載しましょう。特別損失とは臨時的な性質の損失などを記載する項目で、減損による損失も臨時のものであるため、忘れずに記載しておきます。

減損の詳細は財務諸表に注記する

減損損失については、資産あるいは資産グループごとに詳細を財務諸表に注記しなくてはいけません。以下の内容を含めて記載しておきましょう。

  • 減損損失を実施した資産や資産グループの目的や種類など
  • 減損損失を実施することになった理由
  • 減損損失として調整した額と固定資産ごとの内訳
  • 回収可能額を計算した方法、基準、割引率
  • 資産グループを作成した場合はグループ化の基準

 

減損するかどうかを見極めるタイミング


減損処理の実行には、タイミングを的確に見極めることが求められます。次の4つの状態のいずれかが見られるときには、減損処理を行うタイミングと考えられるでしょう。

  • キャッシュフローが継続してマイナスのとき
  • 市場環境などが著しく悪化しているとき
  • 資産の市場価格が著しく悪化しているとき

キャッシュフローが継続してマイナスのとき

収益性が下がったという兆候として、継続したキャッシュフローのマイナスが挙げられます。しかし、キャッシュフローが2期連続でマイナスになったり、1期前もマイナスで今期もマイナスが見込まれる、将来気に継続してマイナスが見込まれる、というときには、減損が必要かもしれません。

ただし、将来的に改善されそう、たとえば、2期連続でマイナスでも今期はプラスになりそうなときは、減損は不要と判断できます。

市場環境などが著しく悪化しているとき

事業や資産に問題がない場合でも、周囲の環境によっては減損が必要になることがあります。例えば事業分野において市場環境が著しく悪化しているときは、キャッシュフローがマイナスになることが予想されるため、減損を検討しておくことができるでしょう。

また、事業を行う上で技術的あるいは法的に好ましくない環境となった場合も、減損のタイミングが近づいていると考えられます。

資産の市場価格が著しく悪化しているとき

資産価値が過半数を割るほど著しく下落した場合にも、減損のタイミングが近づいていると判断できるでしょう。なお、資産価値については、不動産会社などが提示する売買成立の価格を参考にしますが、公示価格や路線価などを用いて計算することもあります。

 

減損処理の手順

減損処理の手順はシンプルです。次の5つのステップに沿って実行していきましょう。

  1. 固定資産をグループに分ける
  2. 減損処理の兆候が見られるか調べる
  3. 減損処理の対象となる資産グループを絞る
  4. 減損損失を測定する
  5. 減損損失を損益計算書に計上する

1.固定資産をグループに分ける

減損処理をスムーズに進めるためにも、最初に固定資産をグループに分けておきます。通常は同じキャッシュフローが生み出される組み合わせ、あるいは用途が同じ資産で分けることが一般的です。いくつかの店舗や支店を有する場合は、店舗ごと、支店ごとに資産をグループに分けると同じキャッシュフローが生み出される組み合わせになり、計算がしやすくなります。

2.減損処理の兆候が見られるか調べる

固定資産のグループごとに、減損をすべきタイミングとなっているか、あるいはタイミングが近づいているか調べていきます。例えばキャッシュフローが2期連続でマイナスになっているときや、事業の廃止や規模の縮小、あるいは計画していた事業が中止・延期になったときなどは、減損のタイミングが近づいていると考えらえるでしょう。

また、固定資産の価値が著しく下落したときや、技術的あるいは法的な環境が事業継続に著しくマイナスの影響を与えると予測されるときも、減損処理の兆候が見られると判断できます。

3.減損処理の対象となる資産グループを絞る

減損処理の兆候が見られるかどうかについて、資産ごとに丁寧にチェックしていきましょう。減損のタイミングが近づいていると判断される資産が見つかったときは、その資産が属するグループにターゲットを定め、減損処理の対象と決定します。

4.減損損失を測定する

減損処理の対象となる資産グループを絞った後、実際にどの程度の減損損失があるのか計算します。減損損失は以下の式で求めることが可能です。

  • 減損損失=帳簿価額-回収可能価額

帳簿価額とは、帳簿に記載されている価額のことで、資産を取得したときの価額と比べて減価償却により年数分減少した金額です。一方、回収可能価額とは、使用価値と正味売却価額のを比較し、いずれか高いほうの金額を指します。

使用価値とは、対象となる資産グループを継続的に使用し、また、使用後に処分した際に生じるキャッシュフローの現在価値です。対して正味売却価額は、資産グループの時価から処分費用として見込まれる金額を差し引いて求めます。

5.減損損失を損益計算書に計上する

減損処理を行った資産グループについて、合理的な方法で減損損失を配分していきます。なお、減損損失を損益計算書に計上した後は、減損損失の戻し入れを行わず、会計上も処理はしません。

 

事業譲渡・株式譲渡についてご検討の際はぜひご相談ください

キャッシュフローの悪化や、営業損失が継続した場合には、減損処理を行うことで、帳簿上の資産価値を減らして回収可能な価額に調整することができます。

帳簿上の調整による経営改善のやり方ももちろんありますが、事業譲渡による事業の選択と集中、株式譲渡による資本提携などM&Aを活用することで抜本的に会社、事業の成長を下支えする手法も存在します。

会社の状況や経営者の考えによりその方法は変わりますから、事業譲渡や株式譲渡などを少しでもお考えの際は弊社にご相談ください。お客様に寄り添い、問題解決につながるご提案をいたします。相談料は不要ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

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