持分法はグループ化企業の会計処理方法のひとつ|連結法との違いや未実現利益について解説

持分法とは、グループ化した会社の会計処理方法のひとつです。連結法とは何が異なるのか、実際の会計処理はどう行うのかについて解説します。また、グループ間で未実現利益が生じた場合の処理についても見ていきましょう。

持分法とは?わかりやすく解説

持分法とは、関連会社が上げた当期純利益のうち、投資会社が保有する持株比率で計算した金額を会計処理に組み込むこと、あるいはその会計処理を指す言葉です。持分法を用いて会計処理する対象となる関連会社を「持分法適用会社」といい、「連結子会社」とは区別します。

連結子会社とは、50%を超える議決権を有している会社です。50%以下でなおかつ関連のある会社は関連会社となり、会計処理を行う際に持分法を用います。

連結法との違い

連結子会社に対しては、持分法ではなく連結法で会計処理を行うことが一般的です。連結法と持分法の会計処理においては、仕訳の際に違いが表れます。持分法では1回の会計処理で済むところを、連結法では「支配権を獲得したとき」と「利益が発生したとき」の2回に分けて会計処理を行うという点に注意しましょう。

また、決算でも、持分法の関連会社、の場合は持分比率に応じて対象会社の営業損益を、損益計算書の親会社の営業外損益として組み込みます。

一方、連結子会社の場合、損益計算書、貸借対照表も合算しておこなうことになります。

持分法適用会社とは?

持分法が適用される関連会社のことを「持分法適用会社」と呼びます。過半数の議決権を有している連結子会社と比べ、持分法適用会社は親会社との結びつきが弱く、支配関係もあまり強いとはいえません。

持分法適用会社は「関連会社」か「連結はしていない子会社」であることが一般的です。それぞれどのような関係なのか詳しく見ていきましょう。

関連会社

関連会社とは、資金や人事、取引などの関係を通じて重要な影響を与える子会社以外の会社のことです。また、会社の議決権の20%以上を持っているときや、15%以上20%未満の議決権を持ちつつ取締役などの重要な役職に当たる人材を派遣しているときなども、関連会社といいます。

連結はしていない子会社

50%を超える株式を有している子会社は、連結子会社です。連結法で会計処理を行うため、持分法適用会社ではありません。しかし、50%以下の株式を有している子会社は連結していないため、持分法で会計処理を行うことがあります。この場合は持分法適用会社と呼び、連結子会社ほどには影響を与えないもののある程度影響力のある関係と考えることができるでしょう。

ただし、連結子会社であっても会社間の関係においてあまり重要性が高くないときは、連結法ではなく持分法で会計処理を行うことがあります。この場合は連結子会社であっても持分法適用会社となるでしょう。

持分法適用会社か調べる方法

財務諸表の注記あるいは別途記載の部分を見ることで、対象会社が持分法適用会社かどうかを調べることができます。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

連結財務諸表の注記を見る

有価証券報告書を提出している会社であれば、連結財務諸表の注記の部分に持分法適用会社の存在についての記載があるケースもあります。上場している企業であれば有価証券報告書は必ず発行しているので、連結財務諸表を確認していみましょう。

連結財務諸表の注記の部分に記載されていない場合は、有価証券報告書の中に関連会社の状況を記載した項目が設けられていることがあります。その中に持分法適用会社かどうかについても記載されていることがあるので、確認してみましょう。

国際会計基準においては別途記載

国際会計基準(IFRS)を用いて会計処理を行っている場合は、連結財務諸表の注記の部分ではなく、他の帳簿や書類に別途記載している可能性があります。企業によって、持分法適用会社に関する記載場所が異なることもあるため注意しましょう。

持分法適用会社の会計処理について

持分法適用会社に関する会計処理について具体的に見ていきましょう。主となる会社をA、持分法適用会社をBとし、次の状況が成立しているとして解説します。

  • A社はB社の議決権の20%を取得している
  • A社もB社も会計期間は4月1日~3月31日である
  • のれんはない

純利益の処理

B社が利益を上げた場合、A社は持株比率に応じて、つまりこの場合であれば20%を会計処理に組み込むことが可能です。例えばB社が100の利益を上げたときは、A社は以下のように仕訳をすることができます。

借方

貸方

関連会社株式

20

持分法による投資損益

20

つまり、B社が純利益を上げたことで、B社の株式の価値が上がり、A社も間接的に利益が上がったと考えることができます。

配当を受け取ったとき

B社から配当20を受け取ったときは、A社は以下のように仕訳をすることができます。

借方

貸方

現金預金

20

受取配当金

20

B社は配当を渡すときに自社株式の価値を減らしたことになるため、A社では貸方の勘定科目を「関連会社株式」として以下のように仕訳をすることもできます。

借方

貸方

現金預金

20

関連会社株式

20

持分法適用会社が買い手となる未実現利益

グループ内の取引で生じた利益のうち、期末までに確定しないものが「未実現利益」です。持分法適用会社が買い手となる場合は、資金が投資会社から持分法適用会社に流れているため「ダウンストリーム」と呼びます。

通常の会計処理において、ダウンストリームが起こっているときは持株比率に相当する金額を消去することが可能です。しかし、連結子会社ではない持分法適用会社にダウンストリームが起こっているときは、例外的にすべての利益を消去して会計処理を行います。

持分法適用会社が売り手となる未実現利益

反対に、持分法適用会社が売り手となって未実現利益が生じていることを、資金が持分法適用会社から投資会社に流れているため「アップストリーム」と呼びます。この場合は、持株比率に相当する金額を消去して会計処理を行うことが一般的です。

ただし、売り手も買い手も持分法適用会社である場合には、それぞれの持株比率を乗じた持分相当額を消去して会計処理を行います。

M&Aをご検討の方はぜひご相談ください

持株を有する関係会社や非連結子会社から利益を得られる場合には、投資会社としては有益な関係を築いていると判断することができます。しかし、関係会社や非連結子会社、あるいは連結法を用いて会計処理を行う連結子会社の業績が不振で余波を受けている場合、あるいは多大な損失を受けている場合は、企業との関係を見直す必要があるかもしれません。

企業間の関係は、M&Aによって見直しあるいは再構築することもできます。関連会社などとの関係においてお悩みのときは、ぜひ弊社にご相談ください。トラブルの原因がどこにあるのかを調べ、どのように解決することが望ましいのかお話しを伺った上で、最適な解決方法を提案いたします。相談料や着手金はいただいておりません。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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