その廃業は本当に必要か?|宝は必ずある-事業承継活動レポート

 

企業の廃業件数は年々増加、いまでは年間2万社を超える会社が廃業をしています。

経営者が計画し選択することで、当然さまざまな悩みや問題があるわけですが、すべての廃業にそこまでの必要性があるのか、果たして廃業という選択肢以外はなかったものなのか、甚だ疑問が残ります。

中小企業の半数は廃業予定

下記の図は、中小企業の経営者に聞いた後継者の決定状況を経営者の年齢別にまとめたもの。

※出典元:日本政策金融公庫総合研究所「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」

こちらの調査によると、中小企業の廃業予定企業は全体で見ると50%。経営者が60歳代、70歳代になると60%近くが廃業予定となっています。

当然、廃業には従業員の解雇や取引先へのダメージを伴い、周囲への影響や負担も大きなものになるので、出来る限り避けたい選択肢です。
にもかかわらず、なぜ大半の経営者は「廃業」という道を選ぼうとしているのでしょうか。

「後継者がいない(継ぐヒトがいない)」という思い込み

下記の図は、廃業予定と回答した企業の廃業理由をまとめたもの。

※出典元:日本政策金融公庫総合研究所「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」

廃業理由は「当初の意志」「将来性」など会社によってさまざまですが、今回注目したいのは約30%の経営者は「後継者がいない」ことを理由に廃業を決めているという点です。

事業承継先には、

❶  親族
❷  従業員(MBO)
❸  外部(M&A)

という3つの選択肢があります。
事業を引き継ぎたいという意志がありながら、このどれもが叶わなかった場合には、廃業に行きつくことになります。

ただ、前述の「後継者がいない」ことを理由に廃業を決めた経営者は、おそらく①親族 ②従業員の2つの範囲のみで判断され、③のM&Aという選択肢については検討がなされていないことが多いように思います。

要は「後継者がいない」場合のその他の選択肢が分からない、という問題。

「売れるはずがない(継ぐモノがない)」という思い込み

実際に、あるオーナー社長より「周囲に引き継ぐ人がいないから廃業も考える。やりようがあるなら相談したい」という相談を受けたことがありました。

M&Aの選択肢を提示した際には、「うちの会社が本当に売れるのか?」「評価される部分などあるのか?」など疑心暗鬼な部分もあったようですが、「従業員の雇用だけは守りたい」「取引先に迷惑をかけたくない」という思いのもと、M&Aに着手。

まったく難航することもなく、引継ぎ先が決まりました。
引継先が決まり、相談当初の沈んだ表情が嘘のように、実際に引継ぎを終えた際の社長の晴れやかな表情を忘れられません。

沈む夕日は、
どこかで昇る朝日

廃業という選択肢が浮かんだ際には、どうしても後ろ向きになったり消極的になったりすると思います。

しかし、経営者がいま後ろ向きであろうが、消極的であろうが、またM&Aに対して自分には関係ない、売れるわけない、という距離感を抱いていようが、経営者がこれまで築いて来たもの、経営者には当たり前すぎて気づいていない事業の価値というものが必ずあります

逆に言えば、経営者自身のネガティブな評価は関係なく、その価値を十分に理解し、ぜひ引継ぎたいという第三者は現れます。

M&Aの選択肢のみを推奨するわけでは決してありませんが、「後継者がいないから廃業」などと、どうか自己完結することなく、ぜひご相談いただければと思います。

執筆:株式会社事業承継通信社 柳 隆之

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