株式分割とは資本金を変えずに株式数を増やすこと!実施する理由を解説

株式分割とは1つの株式を複数に分けることで、資本金を変えずに株式数を増やす手法です。どのような理由で実施するのか、メリットや注意点についても見ていきましょう。また、実施するタイミングについても解説します。

株式分割とは株式を複数に分けること

株式分割とは、発行済みの株式をいくつかに分けることを指す言葉です。例えば1株を2株に、あるいは10株に変更します。分割する数は整数に限られていないので、100株を150株などにすることもあるでしょう。株式分割を行うと、株式を新たに発行しなくても発行済み株式数を増やすことが可能です。

株式分割を実施すると、その企業の株式すべてに適用されます。市場で取引されている株式はもちろんのこと、個人や法人が保有している株式も分割されるので、保有株式数が一気に増加することになるでしょう。

例えば、証券会社の口座でA社の株式を100株保有していたとします。1株=3株に株式分割が行われると、口座の株式にも反映されて300株になるでしょう。自動的に計算されて株式数が書き換えられるので、株主は特に何の手続きもする必要はありません。

分割された時点では時価総額は変動しない

株式分割を行うと、発行済み株式数は急激に増えることになります。例えば1:10の株式分割を行えば、発行済み株式数は一気に10倍になるでしょう。

しかし、株式分割を行ったからといって急に企業の価値が上昇するわけではありません。そのため、株式分割が実施された時点では時価総額(株価×発行済み株式数)には変動はなく、企業の価値にも影響を与えないと考えられます。

株式分割実施後は登記が必要

株式分割を行った場合は、速やかに登記簿上の発行済み株式数を変更しなくてはいけません。株式分割を実施してから2週間以内に法務局に行き、株式分割により発行済み株式の総数が変わったことを登記します。

登記の際には発行済み株式数が変わったことを示す書類が必要です。株式分割に対する決議を取ったときの株主総会の議事録や、取締役会で決議したときには取締役会議事録を提出できるでしょう。株主総会の決議により決定した場合は、株主のリストや委任状なども必要になります。

株式分割による発行済み株式数の変更に関する登記には、30,000円の登録免許税が必要です。印紙を変更登記申請書に貼付して提出しましょう。

株式分割をする理由とタイミング

株式分割を行う度に登記申請を行い、登録免許税を納付しなくてはいけません。手間がかかるだけでなくコストもかかるので、妥当な理由があり、なおかつ分割すべきタイミングで実施する必要があるといえるでしょう。一般的には、次の3つのタイミングで株式分割を行います。

  • 1株あたりの価格が大きくなり過ぎたとき
  • 上場の条件を満たす必要があるとき
  • 株主への配当や優待を変更するとき

1株あたりの価格が大きくなり過ぎたとき

株価が高くなり過ぎると、流通量が減ることがあります。例えば株価が上昇し、10,000円前後でほぼ安定しているとしましょう。株式は100株単位で売買するため、この企業の株式を購入するためには最低でも100万円の資金が必要になります。投資家の中には気軽には手を出しにくいと考え、買い控えを行うかもしれません。

1:10に株式分割をすれば、1株の価格は1,000円前後になります。100株でも10万円と安価になるため、広く投資家を募ることができるでしょう。

また、株式分割をすると単純に市場に流通する株式数が増えます。買いたいのに買えないという状況にはなりにくくなるため、取引が活発になると考えられるでしょう。

1株あたりの価格が大きくなり、流動性が下がったと判断できるときは、株式分割のタイミングです。流動性を高める水準に分割し、取引が活発に行われる状態を作りましょう。

上場の条件を満たす必要があるとき

株式市場に上場するときは、さまざまな条件を求められます。上場のハードルは決して低いものではないので、相応の準備が必要です。また、東証マザーズやJASDAQから東証一部に上場市場を変更するときにも、一定の基準を課せられるでしょう。

これらの条件の中には、株主数や流通株式数などが一定数以上であることが含まれます。株式分割をすれば比較的容易に株式数を増やせるだけでなく、株価が下がって投資家が増えるため株主数の増加も可能です。そのため、上場あるいは指定替えの条件を満たすために株式分割を行うケースも少なくありません。

株主への配当や優待を変更するとき

株主への利益還元を増やすために、株式分割を行うケースもあります。例えば現時点では100株につき2,000円の配当を行っているのであれば、配当の割合を変えずに1:2の株式分割を行うと、株主は今までの2倍の配当金を受け取れるでしょう。

また、株主優待についても同様です。現時点では100株につき5,000円分の優待券を提供しているのであれば、株主優待の割合を変えずに1:2の株式分割を行うことで、株主は今までの2倍の優待を受けられることになります。

なお、株主への利益還元を増やしたいときは、配当や株主優待の割合を変えずに株式分割を行うことができるでしょう。しかし、特に利益還元を増やしたいわけではないときは、株主分割に合わせて規定を変更することができます。例えば1:2の株式分割を行うに当たって、100株あたり5,000円分の優待券の提供ではなく、200株あたり5,000円分、もしくは100株あたり2,500円分の優待券の提供に変えられるでしょう。

株式分割をする5つのメリット

株式分割を実施することには、さまざまなメリットがあります。その中でも特に注目すべきメリットとしては、次の5つを挙げられるでしょう。

  1. 流動性が高まる
  2. 株価が安定しやすくなる
  3. 時価総額が増えることもある
  4. 企業価値が高まる
  5. 上場しやすくなる

1.流動性が高まる

株式分割を行った時点では、分割割合に即して1株あたりの価格が下がります。株価が下がると投資家にとって買いやすくなり、取引が活発に行われて流動性が高まるでしょう。また、市場に出回っている株式数が増えることでも、取引が活発になり、流動性が高まります。

2.株価が安定しやすくなる

株価が高いということは、価格変動の幅も広いということです。例えば1株=10,000円の株式にとっては100円程度の株価の動きは誤差にも等しいですが、1株=1,000円の株式にとって100円の値動きは企業を動かしかねない大きな変化といえるでしょう。

つまり、株式分割により1株あたりの価格が下がると、価格変動の幅が狭まり、株価が安定するようになります。また、株式数が増えることで株主が増え、少数の大株主により株価が動くことを回避できるようにもなるでしょう。

3.時価総額が増えることもある

株式分割を実施した直後は時価総額は変化しません。しかし、時間が経過し、流通が活発になると、株価が上がって時価総額が増えることにもなるでしょう。さらに流通が活発になり株価が上昇したときは、再度株式分割を行う必要性が生じるかもしれません。

4.企業価値が高まる

時価総額が増え、市場全体の時価総額に占める割合が増えると、企業価値も高まったと判断できるようになるでしょう。実際に株価の上昇は時価総額の上昇だけでなく、企業価値の高まりを意味しています。株式分割がきっかけとなって流動性の上昇、株価上昇、企業価値の上昇と好ましい連鎖を招くこともあるでしょう。

5.上場しやすくなる

株式分割により株主数や流通株式数が増えることで、上場の条件を満たせることがあります。また、流動性が生まれることで取引が活発になり、売上高が増えることでも、上場実現に近づくでしょう。すでに上場している場合も、株式分割を行うことで希望する市場への上場変更を実現しやすくなります。

株式分割の際に注意すべき3つのポイント

株式分割を実施する際には、次の3つのポイントに注意しましょう。

  1. 運営判断の迅速性が失われることがある
  2. 一時的に株価変動が激しくなることがある
  3. 株主増加により管理コストが増える

それぞれのポイントについて解説します。

 

1.運営判断の迅速性が失われることがある

株主が少ないと意見がまとまりやすいため、運営判断も迅速に行えることが多いです。しかし、株主が増えると意見がまとまりにくく、運営判断にも時間がかかり、場合によってはビジネスのチャンスを逃すことにもなりかねません。社長の一存でスピーディに事業を進めていきたい企業は、あえて株主を少なく抑え、迅速性を維持することもできます。

2.一時的に株価変動が激しくなることがある

1株あたりの価格が下がり、幅広い投資家に取引しやすい株式になると、活発に取引が行われ、株価の変動が激しくなることがあります。流動性が高まることはよいのですが、株価が会社の価値を反映しないほどに変動するようになると、投資家離れを起こし、急激に株価が下がる可能性があるでしょう。

また、株価変動が激しくなると、投機目的で購入する投資家も増えます。純粋に企業の価値に魅力を感じて投資する投資家の割合が、減ってしまうことも想定されるでしょう。

3.株主増加により管理コストが増える

株式分割を行うことで株価が下がり、投資しやすい株式になると、流動性が高まり、取引が活発に行われるようになります。株主の数も増えるため、一部の大株主の意向で経営方針が決まることが少なくなり、より透明性の高い経営を実現できるようになるでしょう。

しかし、株主が増えると株主を管理する手間やコストが増えるという問題もあります。株主総会の案内状を株主の数だけ作成し、郵便で送るという流れだけでも大幅なコスト増になるでしょう。

また、株主総会を開催する場所も、株主が増えれば相応の広さが求められます。会場代やスタッフの人件費などもかさむようになるでしょう。

株主優待を実施している企業であれば、株主が増えることで株主優待にかかるコストも増えます。株主優待として提供する物やサービスが増えるだけでなく、配送の手間やコストも増えるでしょう。

 

M&Aについてのお悩みはぜひご相談ください

企業が成長し、株式の価値も増大したときには、株式分割を行う必要性も生じます。比較的簡単に発行済み株式数を増やすことができるので、流動性を高めるためにも実施することができるでしょう。

成長に合わせて、企業の形も変えていく必要があります。事業売却や会社分割などを実施して、経営しやすいサイズに調整することも重要といえるでしょう。

事業売却などのM&Aをお考えの方は、ぜひ弊社にご相談ください。M&Aの経験が豊富なスタッフが、お客さまのご事情とご希望に合わせた新しい企業の形をご提案いたします。ご相談は無料です。

また、事業売却をご検討の場合は着手金や中間金なども無料でサポートいたします。現在のお悩み、そして将来的なお困りごともぜひご相談ください。お客さまの立場に寄り添ってお手伝いいたします。

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