「アーンアウト」とは?売却時に条項をつけるメリットとデメリットを解説
アーンアウトとは、企業買収により予定した目的が達成できたときに売却側に一定の金額を支払うこと、あるいはその義務のことで、M&Aの取引で主に使用されます。契約書にアーンアウト条項が含まれているとどのようなメリットがあるのか、また、どのような不利益が起こりえるのか見ていきましょう。
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アーンアウトとは
M&Aの取引が終了した一定期間内に買収をした企業が一定の目的を達成すると、売却側の企業に追加で対価を支払うこと、あるいはその義務を「アーンアウト」と呼びます。また、「アーンアウト条項」とは、この規定について記載された契約書内の条項のことです。
変動要素の高い収益の見込みがあるなど、譲渡価額に反映しづらい場合、判断しづらい場合に用いられることが多いです。
追加対価は分割で支払われることも
目的を達成した場合の追加対価は、何年にも分けて分割で支払われることもあります。例えば買収を実施したときに対価の60%を売却側に支払い、翌年に目的を達成したならば対価の10%、その翌年も10%という風に、時間をかけて買収の効果を見ながら対価を払っていきます。何年にも分けることで、買収側はより慎重なM&Aの取引を実行することができるでしょう。
アーンアウト条項は最終契約書に記載される
アーンアウトに関する取り決めは、M&Aの最終契約書に記載されます。最終契約書はその名の通り最終的な合意について決定する書類で、法的な拘束力がある重要なものです。
万が一、最終契約書に記載された約束が守られない場合は、被害を被った側は相手に対して損害賠償を請求することができます。そのため、アーンアウトに対しても、条項に記された内容が実行されない場合には賠償責任に発展するでしょう。
アーンアウト条項を組み込むメリット
アーンアウト条項は、必ずしも最終契約書に記載すべきことではありません。アーンアウト条項をつけないで、取引額の全額を契約時に支払うことも可能です。
しかし、アーンアウト条項を最終契約書に組み込むことには売却側・買収側双方にメリットがあります。買収側のメリットは、より慎重な取引ができるという点です。
一方、売却側にもメリットがあります。特に次の4つは注目すべきメリットといえるでしょう。
- 目標を達成すれば対価を受け取れる
- M&Aの成約可能性が高まる
- 売却後も経営に関与できる
- 希望する条件で成約しやすくなる
目標を達成すれば対価を受け取れる
通常のM&Aであれば、売却した時点で対価を受け取ったらそれ以上受け取るものはありません。しかし、アーンアウト条項が組み込まれている場合には、目標さえ達成すれば、売却した後であっても数年にわたって対価を受け取り続けることが可能です。コンスタントに収入が得られるということは、売却側の企業にとって大きなメリットといえるでしょう。
M&Aの成約可能性が高まる
アーンアウト条項をつけるということは、買収側は、取引成立時には通常よりも低い対価のみを支払えば良いということです。M&Aによって予想したような成果を得られたときのみ残りの対価を支払えば良いので、取引へのハードルが下がるでしょう。
買収側のハードルが低くなるということは、売却側にとっては成約可能性が高まることを意味します。思うような対価を得られない可能性はありますが、早く売却したいときにも活用できる手法といえるでしょう。
売却後も経営に関与できる
アーンアウト条項をつけて事業や会社を売却する場合、売却後も経営に関与することが一般的です。経営に力を入れることで売上が上がり、残りの対価も得やすくなるでしょう。
また、売却後も経営に関与することで、取引先や従業員に安心を提供できるというメリットもあります。「事業が大変なときに手放した」といったネガティブな評価を得ないためにも、アーンアウトを活用して経営に関わることも検討してみましょう。
希望する条件で成約しやすくなる
アーンアウトとは、いわば成功報酬です。買い手はリスクが低い契約だと判断しやすくなるので、売り手は希望を押し通しやすくなるというメリットがあるでしょう。
例えば対価全額を少々高額に設定しても、買収側は「利益が得られなければ対価も払わなくて良いのだから」と契約しやすくなります。つまり、アーンアウト条項を組み込むことで、お互いが納得できる条件で成約しやすくなるのです。
アーンアウト条項を組み込むデメリット
アーンアウト条項を組み込むことで、買収側はもちろんのこと、売却側も多数のメリットを得られます。しかし、デメリットがないわけではありません。特に次の4点はアーンアウト条項を組み込む前に売却側が留意するべきポイントです。
- 対価は一括で受け取れない
- 売却価格を低く設定される可能性がある
- 追加対価を受け取れない可能性もある
- 交渉が長引く恐れがある
対価は一括で受け取れない
アーンアウト条項を組み込んでないケースにおいて、売却の対価は契約成立時に一括で受け取ることが一般的です。しかし、アーンアウトについての条項がある場合は、成約時には対価の一部しか受け取れません。対価を早く受け取って別の事業に投資したいなどの計画がある場合には、アーンアウト条項があることで予定した資金を確保しづらくなることがあるでしょう。
売却価格を低く設定される可能性がある
買収側が強くアーンアウトを主張しているときは、この取引に対して何らかの不安点があるのかもしれません。その場合は取引価格も伸びづらく、予想以上に売却価格を低く設定される可能性もあるでしょう。また、アーンアウト条項で設定する目標が高すぎ、事実上、売却価格が低く見積もられている可能性もあるので注意が必要です。
追加対価を受け取れない可能性もある
アーンアウト条項に記載された条件を達成できない場合には、追加対価は受け取れません。たとえば、成約時に対価の50%を受け取り、なおかつ条件を達成できないケースにおいては、対価が半額になったのと同じだといえます。
成約後に売却側が経営に関わって追加対価を受け取れるように努力を行いますが、景気の急激な悪化などの不可避の事情で目標を達成できないこともあるでしょう。つまり、アーンアウト条項を組み込むことは、売却側にとっては賭けにもなりえます。
交渉が長引く恐れがある
売却側としてはアーンアウト条項をつけたくない、また、つけるのだとしても達成目標を低くしたいという思惑が働きます。一方、買収側はアーンアウト条項をつけたい、できれば達成目標を高くしたいという相反する思惑が働くでしょう。
両者の妥協点を見つけることが難しく、予想以上にM&Aの交渉が長引く恐れもあります。できる限り早く交渉をまとめたいときには、アーンアウト条項をつけない、あるいは買収側の主張寄りにするなどの対策を検討する必要があるでしょう。
会社売却・事業売却など、M&Aをお考えの際にはぜひご相談ください
アーンアウト条項もそうですが、M&Aにはさまざまな条件の調整が必要となります。
売却側・買収側双方の意向が折り合う地点を見つけるなど、単独で進めるのは困難なことが多いです。
株式の売却や事業の売却をお考えの際には、ぜひ弊社にご相談ください。アーンアウト条項を含め、納得できる最適な解決法をご提案させていただきます。