経営者のハッピーリタイア / 人生100年時代の事業承継・ライフシフトを考える

人生100年時代。
最近よく耳にするようになったこの言葉、あなたはこの時代に生きる未来の自分の姿を具体的にイメージしたことはありますか?

・ある海外の研究では、2007年に日本で生まれた子供の半数が107歳より長く生きると推計されており、日本は健康寿命が世界一の長寿社会を迎えています。

・100年という長い期間をより充実したものにするためには、幼児教育から小・中・高等学校教育、大学教育、更には社会人の学び直しに至るまで、生涯にわたる学習が重要です。

・人生100年時代に、高齢者から若者まで、全ての国民に活躍の場があり、全ての人が元気に活躍し続けられる社会、安心して暮らすことのできる社会をつくることが重要な課題となっています。

引用元:厚生労働省 人生100年時代構想会議中間報告

この記事では、人生100年時代に突入した日本で、これからの事業承継のカタチ、オーナー経営者の理想のリタイアを考えてみたいと思います。

人生100年時代、人の生き方はどう変わる?

人生100年時代という言葉は、もともとロンドン・ビジネス・スクールのリンダ・グラットン教授とアンドリュー・スコット教授が著書LIFE SHIFT(ライフ・シフト)100年時代の人生戦略で提唱した言葉で、日本でも2017年9月から首相官邸に安倍首相を議長とする「人生100年時代構想会議」が設置され、広く知られる言葉となりました。


LIFE SHIFT(ライフ・シフト)100年時代の人生戦略
発行日:2016年10月21日 著者:リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット 訳者:池村千秋


要は「長く健康的に生きる可能性が高くなる」ということですが、これによって人の生き方はどう変わるのか?

これまでの人生というのは

20年学び(教育)
   ↓
40年働き(仕事)
   ↓
20年休む(老後)

の3段階が一般的でしたが、人生100年時代においては、単純にこの老後の期間が長くなる、という話ではありません。

一生の中のあらゆるステージでさまざまな変化が一般的になり、たとえば仕事の期間においては「仕事して勉強して少し遊んでまた仕事」のような、これまではひとつの期間だったところに複数のイベントが入り込んでくることになります。


本書
のなかでは、不確実性が高まる中、引退後の資金問題に加えて、スキル・健康・人間関係といった「見えない資産」をどう育んでいくかという問題に直面するだろう、という問題提起がなされています。

見えない資産とは、具体的には、
「生産性資産(所得・キャリアを向上させるのに役立つ能力)」
「活力資産(やる気を生み出す肉体的・精神的健康)」
「変形資産(変化や新しいステージへの移行を成功させる意思と能力)」のこと。

この「見えない資産」を育むことで、100年という人生を豊かなものにすることができると説いています。

第2の人生を生きる選択 

たしかに人生100年時代においては、どこかの企業に属して働いていた人が「ずっと同じところで働く」というのはもはや現実的ではないわけで、その企業を引退した後も他の場所で働いたり学んだりすることが求められるわけですが、中小企業のオーナー経営者の場合はどうなるのでしょうか。

「自分で立ち上げた事業を70歳まで続けた後、事業承継を行う」というのが現在の一般的なステップだとするならば、その承継時期が100歳まで延びる・・・と?

死ぬ気で事業を立ち上げて、何年もがむしゃらに働き続けて70歳。はい、あと30年は頑張れますね、という世界ではないはずです。

本音は創業した事業に飽きた?

実際に、引退を考えるオーナー経営者が「事業承継をしたい」と思う理由はさまざまで、高齢の方であれば、「(病気が見つかり)体調が不安」「経営能力の衰え」「自分では無理」という判断を下すこともありますが、実は「飽きた」「ほかのことをやってみたい」という声(本音)も多い

人生100年時代においては、経営者は自分の会社のオーナーというだけでなく、1度しかない一生を生きる自分の人生のオーナーでもあるわけです。

企業の中でサラリーマンとして働いていれば、部署移動もある、転勤もある、場合によっては住む環境も働く人も、自分の意志とは関係のないところで激変する。それはそれで雇われた人の悩ましいところではありますが、環境が変わる分、刺激があるという側面はあります。

ところがオーナー経営者はどうでしょう。基本的に、長い期間、同じ場所で、同じ仕事を行うことが多い。そこで「事業に飽きてしまった」「ほかの選択肢に目を向けたい」と思うのは、ある種必然といえるかもしれません。

自分が創業した会社から離れるというのは、得も言われぬ思いがあるでしょう。また自分についてきてくれた従業員に対して、後ろめたさのようなものを感じることもあるかもしれません。

しかし、「たった1度きりの自分の人生を生きる」と考えたとき、そしてその期間がどうやら長くなるようだぞ、と考えたときには、これまでとはまた違った第2の人生の選択肢が必要になるのではないでしょうか。

ライフシフトの糧となる創業者利益 / キャピタルゲイン

創業者利益とは、オーナー経営者が会社創業時から持っていた株式を第三者に売却することで得られる利益のことですが、創業リスクを負っている分、大きな利益を得る可能性は大きく、企業勤めのサラリーマンと比べると、自分の人生をシフトできる幅・可能性はある意味で大きいと言えます。

実際に起業した会社を50歳で一旦引退し、海外に留学、そのまま海外で再度起業する人もいれば、得たキャピタルゲインで不動産を取得、不労収入を得ながら悠々自適に生活する人もいます。はたまた投資家として、これからの事業を支える立場になる人もいます。

オーナー経営者の第2の人生には、実に多くの選択肢があるのです。

 

ライフシフト・第2の人生を思い描いてみる

オーナー経営者にとっては、必死で立ち上げた事業に日々邁進し、忙殺されていた日常から離れて、この先に続く第2、第3の人生を思い描くというのはなかなか困難なことだと思います。

ライフシフトジャパンから出版された「実践!50歳からのライフシフト術」には、次の人生にライフシフトした方の実例が数多く記されています。これから先の人生を思いめぐらす参考とされてはいかがでしょうか。


実践! 50歳からのライフシフト術―葛藤・挫折・不安を乗り越えた22人
発行日:2018年12月5日 著者:大野誠一、豊田義博、河野純子、ライフシフト・ジャパン


また、私ども事業承継通信社でも「オーナー経営者の引退後のありたい姿」について多くの個別相談やセミナーのご依頼をいただいております。事例含めて提供させていただきますので、少しでも悩まれたり迷われるようでしたら、お気軽にご連絡ください。

執筆:株式会社事業承継通信社 柳 隆之

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