持株会社を設立するメリットとは何か?持株会社の種類やリスクについても解説
持株会社(もちかぶかいしゃ)とは子会社を支配することを目的とした会社のことです。支配だけを目的とすることもありますが、支配しつつ自社も事業活動を行なうことがあります。持株会社を設立することにはどのようなメリットがあるのか、また想定されるリスクについて見ていきましょう。
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持株会社とは?
持株会社とは、子会社の運営や支配を目的とした会社です。多くのグループ会社には持株会社が存在し、グループ全体の統制・指揮を行います。
また、持株会社がない企業グループであっても、組織再編を行う際に新たに持株会社を設立することは珍しくありません。主に以下の3つの種類があり、目的や事業範囲によって使い分けられます。
- 純粋持株会社
- 事業持株会社
- 金融持株会社
純粋持株会社
純粋持株会社とは、子会社の運営や支配のみを目的とする会社です。それ自体で事業を行わないため事業収益がなく、子会社の株式を保有して受け取る配当を主な売上としています。ホールディングスと名乗っている会社は、純粋持株会社であることが多いです。
なお、事業を行わないことを特徴とする純粋持株会社は、かつては独占禁止法により禁止されていました。
事業持株会社
事業持株会社とは、子会社の運営や支配をしつつ、自社の事業も行う会社です。子会社の株式を保有して配当を受け取っていることもありますが、自社の事業による売上もあるため、子会社の業績に左右されにくいという特徴があります。
金融持株会社
金融持株会社とは、金融機関の株主となりグループ企業の運営や支配を担当する会社です。
なお、グループ企業がすべて金融機関でない場合も、金融持株会社と呼ぶことがあります。例えば銀行や保険会社などがグループ企業の多数を占めている場合、IT業務をメイン事業とする企業が含まれていても、金融持株会社と呼ぶことが一般的です。
持株会社を作るメリット
いくつかの企業が存在し、グループ企業である場合は、持株会社を設立することを検討できます。また、すでにある企業の株式を移転することや、会社分割によって子会社を設立して事業を移転し、持株会社とすることも可能です。持株会社を設立する主なメリットとしては、次の2つを挙げられます。
- 事業ごとに制度などを調整できる
- 組織構造がわかりやすくなる
1.事業ごとに制度などを調整できる
持株会社を設立することで、経営と事業を切り離すことができます。また、持株会社を経営の中心として組織再編を行うことで、子会社をそれぞれ事業ごとに特化することが可能です。
会社ごとに最適な人事制度や給与制度を導入すれば、事業効率を向上させ、売上増を期待することができるでしょう。また、専門性を伸ばすこともできます。
2.組織構造がわかりやすくなる
複数の企業が並列した状態で存在すると、それぞれの関係が不明瞭になり、効率的な経営を行うことが難しくなります。持株会社を設立するならば、持株会社を中心としてそれぞれの企業がつながる形になり、組織構造がわかりやすくなるでしょう。また、指示系統も明確化するため、グループ企業同士の協力もスムーズに行えるようになります。
持株会社を作ることによる事業承継やM&Aへの影響
持株会社を設立することで変わるのは、グループ全体から見た組織構造や各事業の専門性だけではありません。事業承継やM&Aなどのさまざまなシーンで影響を与えることがあります。特に次の2つにおいて、持株会社を設立することがプラスに働くと考えられるでしょう。
- 事業売却しやすくなる
- 事業承継しやすくなる
1.事業売却しやすくなる
企業内の特定の事業を売却するときは、手続きが複雑になります。売却する対象の事業を絞るだけでなく、事業内の契約や取引先、許認可、所属する従業員などもそれぞれ新たに契約手続きをしなくてはいけません。
しかし、持株会社を設立して事業ごとに法人化しておくと、会社に含まれる契約や取引先などもすべてまとめて売却することになり、手間がかからないというメリットがあります。買収側にとっても大幅な手間の削減となるため、事業売却しやすくなるでしょう。
2.事業承継しやすくなる
巨大企業としてさまざまな事業を包括しているよりも、事業ごとに法人化することで、経営陣の負担は軽くなります。一人に多大な負担を強いることがなくなるため、事業承継もしやすくなり、企業として存続しやすくなるでしょう。
また、事業ごとに法人化することには、経営不振になったときでも企業全体にダメージが及びにくいというメリットがあります。経営実績がない場合でも小規模の企業から経験を積んでいけるので、事業を引き継ぎやすくなるでしょう。
持株会社にするリスク
持株会社を設立することで、各子会社に独立性を保持したまま支配を及ぼすことが可能になり、第三者による買収を回避することができます。また、M&Aや事業承継もしやすくなり、より柔軟に企業存続を図ることができるでしょう。
しかし、持株会社を設立することでリスクも生じます。特に次の2点については持株会社を設立する前に吟味が必要といえるでしょう。
- 事業会社、事業会社間の連携が取りづらい
- コスト増になる可能性がある
事業会社、事業会社間の連携が取りづらい
持株会社は子会社を支配する立場にありますが、連携は取りづらく、協力して事業を行うことは難しい関係にあります。また、子会社同士が連携することはほとんどなく、持株会社を通して連絡することは可能ですが、協力して事業を行うことはあまりありません。
そのため、グループ全体で協力するといったことはほぼ不可能で、持株会社を設立することでシナジー効果が生まれることはまずないと考えられるでしょう。
コスト増になる可能性がある
持株会社を設立することは、新しく企業を設立するということに他ならないため、法人維持のための経費が増えるということです。グループ全体で見れば支出増になるので、短期的には経営効率の悪化を招くこともあるでしょう。
また、各事業を法人化することで、経理や人事などの本来であればひとつの部署で済んでいた部門を子会社ごとに設置しなくてはいけなくなり、さらに経営効率が悪化する可能性があります。持株会社を設立するときは、各部署を最低限の人員で抑えるなどの工夫が必要になるでしょう。
事業承継のお悩みはご相談ください
多方面の事業を有する規模の大きな企業においては、M&Aや事業承継が難しくなることがあります。売却価格が高いため買い手がつきにくいことも、M&Aや事業承継が困難になる一因といえるでしょう。
しかし、持株会社を設立して事業ごとに法人化することで売却しやすい状態に変わります。専門性を打ち出した柔軟な経営が実現し、事業の成長も見込めるでしょう。
事業承継のお悩みはぜひ弊社にご相談ください。お客さまの状況に合わせた解決法をご提案いたします。お気軽にお問い合わせください。