【補助金】経営引継ぎ補助金が受付開始 ~内容から申請方法まで徹底解説~(中小企業庁/コロナ対策補正予算/M&A)
新型コロナウィルス対策の補正予算で成立した経営引継ぎ補助金の申請が2020年7月13日より開始となりました。
改めて経営引継ぎ補助金の内容と、その申請方法について解説していきたいと思います。
▶中小企業庁HP「公募要領(PDF形式:265KB)」
CONTENTS
経営引継ぎ補助金とは?経営引継ぎ補助金の概要
中小企業者を対象とした補助金で、経営資源の引継ぎを促すとともに、実現を支援するため、事業再編や事業統合等にかかる費用の一部を補助するものとなります。簡単に言うと、M&Aにかかる費用の一部を負担し、経営資源の移管をスムーズにおこなうための補助金です。
ちなみに、この経営引継ぎ補助金は、新型コロナウイルス対策の補正予算で成立しており、中小企業庁のページにも「新型コロナウィルス感染症の影響が懸念される中小企業者に対して」という文言がありますが、支給の要件のなかではコロナウイルスの影響については問われておらず、申請時に触れる必要もありません。なので、実質的にコロナウィルスの影響如何に関わらず取得可能になります。
全体スケジュール
全体スケジュール(経営資源引継ぎ補助金事務局パンフレットより抜粋)
基本的な流れとしては以下の通り。
申請から、採択、実施、実施報告、補助金交付、という5つのステップを踏みます。
⑴公募期間 | オンライン申請の場合 2020年7月13日(月)~2020年8月22日(土)19:00 |
郵送申請の場合 2020年7月13日(月)~2020年8月21日(金)消印有効 | |
⑵交付決定日 | 2020年9月中旬(予定) |
⑶補助対象事業実施期間 | 交付決定日~最長で2021年1月15日(金)まで |
⑷実績報告期間 | 事業完了後原則15日以内 |
⑸補助金交付 | 2021年3月下旬 |
まず必要(予定)費用を申請。9月中旬に交付決定されてから、2021年の1月15日までに申請したコストを使用するが、基本です。⑵の交付決定前に使用している場合、たとえばM&Aの仲介会社に着手金を払った、などの場合は、補助金の対象外となります。
他の補助金などでもこのケースはよくあります。補助金交付を前提に費用試算をして商談を進め、交付前に金銭のやり取りが発生したものの、結果交付されなかった、となるとトラブルを誘発しかねないということが背景にあり、使用タイミングには注意が必要です。
ただし、「事前着手届出書」なるものがあり、事前に着手せざるをえなかった理由を記載し提出することで、正当であると認められれば、2020年4月7日まで遡っての費用が認められます。
補助対象者の資格要件(補助金の対象となる企業)
最終契約書の契約当事者となる中小企業者等となり、以下の定義を満たす法人および個人事業主です。
業界分類 | 資本金の額又は出資の総額 | 常勤従業員数 |
製造業その他(*1) | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
サービス業(*2) | 5千万円以下 | 100人以下 |
*1:ゴム製品製造業(一部を除く)は、資本金3億円以下又は従業員900人以下
*2:旅館業は、資本金5千人以下又は従業員200人以下。ソフトウェア業・情報サービス業は、資本金3億円以下又は従業員300人以下
売り手に関しては、対象会社とその支配株主が対象となりますので、個人も含まれます。
また、みなし大企業も対象外となりますので、売り手が中小企業で、買い手が大企業の場合には、売り手のみ補助金対象となります。
補助対象事業の要件と補助費用(補助金の利用目的)
対象事業や引継ぎの要件はまとめると以下のようになります
買い手、売り手、の2つに支援型が分かれ、経営資源の引継ぎを「促すため」なのか「実現するため」なのかによって分かれます。補助率は対象経費の2/3となり、買い手、売り手ともに共通です。経営資源の引継ぎを「促すため」「実現するため」というのは一見分かりづらいですが、以下のように定義されています。
・経営資源の引継ぎを「促すため」の支援
▶補助事業期間に経営資源を譲り渡す者(被承継者)と経営資源を譲り受ける者(承継者)の間で事業再編・事業統合等が着手される予定であること
・経営資源の引継ぎを「実現するため」の支援
▶補助事業期間に被承継者と承継者の間で事業再編・事業統合等が着手され、かつ行われる予定であること
つまりはフェーズ、進捗度合い・実現可能性の違いですね。
「実現するため」の支援
実現可能性が高く、現段階で具体的に検討が進んでおり、(明確に定義されているわけではないですが)相手先候補がある、引継ぎ時期も目安がある企業が対象と考えられ、この場合は、買い手、売り手(廃業なしの場合)ともに200万円が上限。ただし、売り手が廃業を伴う場合には、廃業費用として450万円分が認められますので、総計で650万円が認められます。
※実現するため、が目的なので、実施して実現しなかった場合は、200万円で申請しても100万円の支給となります
「促すため」の支援
これから着手するということですから、(こちらも定義されていませんが)相手先候補もない、引継ぎ時期も分からない、が、検討を始める企業、が対象と考えられ、買い手、売り手ともに100万円が上限金額となります。
交付申請不可の例
交付申請に不可の例は以下の通りとなります。
表現がいろいろとややこしくありますが、1~3の部分の意図は、経営権に事業再編・事業統合前後の実質的な変化がない、ということになり、4,5はグループ内の事業再編や親族内の事業承継などで、実質的な事業再編・事業統合とは認められない、ことを指します。
交付申請不可の例 | |
1 | 事業再編・事業統合等の後に承継者が保有する対象会社又は被承継者の議決権が過半数にならない場合 |
2 | 事業再編・事業統合等の前に承継者が保有する対象会社又は被承継者の議決権が過半数の場合 |
3 | 売り手支援型(Ⅱ型)の株式譲渡で支配株主と対象会社が共同申請する場合、事業再編・事業統合等の前に被承継者が保有する対象会社の議決権が過半数未満の場合 |
4 | 被承継者又は被承継者の株主と承継者との関係が同族関係者である場合 |
5 | 被承継者又は対象会社と承継者との関係が支配関係のある法人である場合 |
補助対象となる経費
対象となる経費はかなり幅広く設定されており、事業再編・事業統合等に向けてかかる費用が認められます。
代表的な費用としては以下のようなものが考えられます。
- 企業価値算定料
- M&Aに向けた各種調査費用
- 着手金、月額報酬、中間報酬、成功報酬
- M&Aマッチングプラットフォームの登録料・利用料
- デューデリジェンス費用
- 契約書類等の作成費用
- 最終契約に際しての士業、コンサルタント等への相談費用
- 不動産、定款変更、抵当権等の登記費用、その他許認可等の申請にかかる費用
- その他M&Aに関する専門家等への謝金 などなど
■買い手支援型、売り手支援型共通
補助対象経費 | 概要 | 補助対象外となる例 |
謝金 | 補助対象事業を実施するために必要な謝金として、専門家等に支払われる経費(謝金における専門家は、士業及び大学博士・教授等に限られます) | 本補助金に関する書類作成代行費用 |
旅費 | 補助対象事業を実施するために必要な国内出張及び海外出張に係る経費(交通費、宿泊費)の実費 | 公共交通機関以外のものの利用による旅費(タクシー代、ガソリン代、高速道路通行料金等) |
外注費 | 補助対象事業の実施に必要な業務の一部を第三者に外注(請負)するために支払われる経費 | ‐ |
委託費 | 補助対象事業の実施に必要な業務の一部を第三者に委託(委任)するために支払われる経費 | 再生計画書の作成等のコンサルティング費用 |
システム利用料 | M&Aマッチングプラットフォームへの登録料及び利用料 | ファイル共有サービス、データストレージ等の使用料 |
上記のとおり、かなり幅広く設定されてはいるものの、補助金や事業計画等の書類作成代行の費用等、事業再編・統合に直接的に関係のない業務に対しては対象外となりますので注意しましょう。また、交通費も認められますが、公共交通機関以外のものの利用は認められません。
また、申請段階では不要ですが、交付が決定され、実施報告をするタイミングでは、補助対象経費について原則として2者以上の相見積もりが必須となります。ただし、たとえばM&Aの仲介業者が独占契約や専任契約を前提するなど、相見積もりが不可能な場合などは、そのことが証明できる資料(契約書など)を提出するなど一定の要件を満たせば、相見積もりの必要はなくなります(詳細の要件については別途ご確認ください)。
■売り手支援型(廃業費)
補助対象経費 | 概要 | 補助対象外となる例 |
廃業登記費 | 事業の廃業に関する登記申請手続きに伴う司法書士・行政書士等に支払う申請資料作成経費 | 登記事項変更等に係る登録免許税 |
定款認証料、収入印紙代 | ||
その他官公署に対する各種証明類取得費用(印鑑証明等) | ||
在庫処分費 (自己所有物) | 事業所の廃止・既存事業の廃止・集約を伴う場合に、既存の事業における商品在庫を専門業者等を利用して処分するために支払われる経費 | 商品在庫を売って対価を得る場合の処分費 |
海外在庫 | ||
解体・処分費 (自己所有物) | 事業所の廃止・既存事業の廃止・集約を伴う場合に①既存事業の廃止に伴う機械装置・工具・器具・備品等の処分費②既存の事業において所有していた建物・設備機器等を解体する際に支払われる経費 | 消耗品の処分費 |
海外で使用していたもの | ||
原状回復費 (借用物) | 事業所の廃止・既存事業の廃止・集約を伴う場合に、既存の事業において借りていた土地や建物、設備機器等を返却する際に、修理して原状回復する為に支払われる経費 | 自己所有物の修繕費 |
原状回復の必要が無い、賃貸借物件及び設備機器等 | ||
海外で使用していたもの |
経営引継ぎ補助金の申請方法
申請書類のダウンロードや、webでの申請は↓からできます
▶令和2年度補正経営資源引継ぎ補助金webサイト
交付申請の流れ
交付申請は、経営引継ぎの補助金申請のWEBページより、申請様式をダウンロード、必要な書類とともに、オンラインもしくは郵送で、交付申請を行います。
申請期間は以下の通り
オンライン:2020年7月13日(月)~2020年8月22日(土)19:00
郵送 :2020年7月13日(月)~2020年8月21日(金)消印有効
- 申請様式のダウンロード
▶経営引継ぎ補助金「各種申請資料」
このページをみるとパンフレットや公募要領から、申請に必要な資料をダウンロードできます - 申請に必要な書類準備
ダウンロードした様式に記入し、添付書類を用意 - 申請(オンラインもしくは郵送)
用意した書類をオンラインもしくは郵送にて申請
申請書類一覧
申請書類一覧(申請webページより)
対象者ごとに「申請様式」と「交付申請類型別必要書類」に区分されます。
「交付申請類型別必要書類」というのは、言葉としては非常に分かりづらいですが、登記簿謄本や決算書など、特段今回の申請のために用意するものではなく、取り寄せれば完了できる書類になります。
今回の申請で作業が発生するのは「申請様式」のほうになります。これがどのようなものなのか、またどのような手順で進めるべきか以下に示します
申請様式
申請webページをみると、以下の通りの申請書類が並びます。
- 誓約書
- 必要書類チェックリスト
- 補助金交付申請書
以下それぞれ順にみていきましょう。
誓約書
Wordでダウンロードできます。こちらは申請内容に虚偽がないことを誓約するものになりますので、難しいものではありません。
必要書類チェックリスト
ひとつのエクセルに2つのシートがある作りになっており、必要書類チェックリスト(1/2)に、対象者としての立ち位置、支援内容や、引継ぎ形態をプルダウンから入力すると、申請における類型番号が区分されるのと、(2/2)に必要書類が黄色いの網掛部分に自動出力されます。申請時に書類のモレがないかをチェックするものにもなりますが、そもそも何が必要なのか、を確認できますので、こちらでまず用意すべき書類を整理しましょう。
補助金交付申請書
上記のダウンロードページから、「売り手」「買い手」に分かれていますのでそこからダウンロードします。
少しややこしいのが、下のようなチャート図が出てきます。支援内容、引継ぎ形態、交付申請類型番号が分かれ、それぞれに申請書が紐づいているため、どこを選べばいいのか分かりづらく、悩むかもしれません。
上の画面は、買い手支援型(Ⅰ型)の申請書から入った画面ですが、11に枝分かれしています。ちなみに、売り手支援型(Ⅱ型)の場合は、補助対象者が多くなるため、枝分かれは20になっています。
一見複雑ですが、どの申請書をダウンロードすべきか悩む必要はありません。結論からいうと、どの申請書(エクセル)をダウンロードしても大丈夫です。実は、全部同じフォーマットです。買い手支援型、売り手支援型、でも分かれていません、同じものです。なので、どれでもいいのでダウンロードしてみましょう。
申請書を開くと、必要書類チェックリストにあったような、プルダウン選択型の画面が出てきます。
合うものを入力していくと、類型番号が自動で入力され、さらに、申請書の必要な入力箇所を自動で判別してくれます。
すると、以下のように、入力が必要な箇所は、水色に網掛けされ、不要な箇所は灰色に網掛けされますので、必要なところを記入しましょう。
また、「交付支援類型番号」とともに、「実績報告類型番号」も判別されますが、申請段階では関係ないようです。実績報告のタイミングで実際に使用することになると思うので、申請時の類型番号は控えておきましょう。
この細かいチャートが役に立つのはすべてのケースに「記入例」が貼られているところです。
実際に自分の類型番号を把握し、記入する際にはこのチャートから、参考となる記入例を探すことができます。また郵送での申請になる場合は、PDFファイルをダウンロードすることになるため、自動判別ができませんので、チャートからダウンロード資料を選びましょう。
事前着手届出書~参考~
前段でも記しましたが、9月中旬に交付決定されてから、2021年の1月15日までに申請したコストを使用するが、基本となります。
しかし、以下の「事前着手届出書」を提出、着手せざるをえなかった理由を記載することで、正当であると認められれば、2020年4月7日まで遡っての費用が認められます。
最後に
大きな機会なので有効活用を
検討をする、という意味でも良い機会だと考えます。今まで検討をするだけでも、費用が発生してしまい動きづらい状況がありましたが、今回の補助金により、そのハードルは低くなりますので、事業の選択肢の幅、可能性が広がるチャンスになるかと思います。
実際にどうなるか、は分かりませんが、少しでも可能性がある方は活用することをおススメします。
余裕をもった費用を申請しましょう
補助金額の枠は申請金額で決まります。
たとえば、費用概算を210万で試算し、補助率2/3で補助金額140万で申請していたものの、結局のところもろもろ300万かかってしまった。この場合、補助金額の決定枠は140万になるので、140万が上限になってしまいます。
しかし、細かく試算し余裕をもって、費用概算を300万で試算して200万の補助金額枠を確保しておけば、200万の補助金額を得ることができます。
逆に、費用概算を300万で試算、200万の補助金額を確保したものの、結果総額で210万しかかからなかった場合は、140万円の支給となります。
いずれにしても給付される額は、申請時の金額の枠を超えることはありませんので、申請時の試算は慎重におこないましょう。
まずは相談を
本補助金においては、発生費用について、相見積もりが原則となっていますが、M&A仲介会社によって料金体系はさまざまです。着手金、中間金がかかるケースもあれば無料のケースもあります。また、成功報酬についても、最低価格を数千万に設定している企業もあれば、数百万円で済む会社もありますから、特に株式譲渡の場合には依頼企業によって手残りの部分に大きな差が発生します。
早めに検討し、複数の会社に相談をしてみることをおススメいたします。
弊社でもまずフラットに貴社が置かれた立場を分析し、相談のうえで必要な手立てを画策してきます。相談料は無料となっていますので、何か気になること心配なこと、お悩みなこと、がありましたら何なりとお問合せください。
※尚、経営引継ぎ補助金の内容および申請方法については、下記事務局にお問い合わせください。
経営資源引継ぎ補助金事務局
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株式会社事業承継通信社 編集部