「割引現在価値」とは将来の利益から算出した価値のこと!計算方法や用いる際のメリット・デメリットも紹介
割引現在価値とは、将来得られるであろう利益から求めた現在の企業価値のことです。具体的にはどのように計算するのか、また、どのような場面で用いられるのかについて見ていきましょう。また、ほかの手法で求める企業価値とは何が違うのかについても解説します。
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割引現在価値とは?
割引現在価値とは、将来受け取れるであろう利益などを現在時点での価値に換算したものです。例えば1年後に80万円を受け取れるとしましょう。
しかし、この80万円は現在にとっても80万円を意味するのではありません。現在80万円を持っていれば、それを元手にビジネスや投資を行うことで80万円以上に増やすことが可能だからです。
インフレなどの貨幣価値の変化がなかったとしても、将来の80万円は現在価値に直すと80万円より小さい、つまり、割り引かれていると考えることができるでしょう。
現在価値との違い
現在価値という言葉は、割引現在価値と同義で使われることが一般的です。例えば1年後に80万円を受け取れる場合で考えてみましょう。
現在80万円を持っていれば、1年後にはビジネスや投資、あるいは預貯金として金融機関に預けておくことなどで80万円よりも増やすことができます。そのため、通常は、現在の価値は80万円より小さいと推測できるでしょう。
しかし、ビジネスも投資も不確実性が高く、必ずしも増やせるとは限りません。増やせない可能性、あるいは減ってしまう可能性について考えれば、現在の価値は必ずしも将来価値より低くなっているとは限らないでしょう。そのため、あえて割引という言葉を使わずに、単に現在価値と言うことがあります。
正味現在価値との違い
正味現在価値とは、投資をして回収できるであろう金額から投資する金額を差し引いて計算します。つまり、投資を行うことで採算が取れるのか、また、利益はどの程度目算できるのかを判断する際に用いる指標です。
正味現在価値が大きいと投資効果は高いと判断することができます。正味現在価値を求めるときは投資期間やタイミングなどを考慮しないため、複数の投資手法をシンプルに比べることが可能です。
将来価値との違い
将来価値とは、現在価値や割引現在価値とは逆の概念です。現在の資産価値が分かっていて、この価値が将来的にどう変化するかを予想したものが将来価値となります。
例えば現在100万円を持っていて、年利8%で運用するのであれば、1年後の将来価値は108万円です。得られた運用益も含めて、同じ方法で再投資をするとすれば、2年後は108万円×1.08=1,166,400円の将来価値になると計算できます。
割引現在価値の計算方法
現在価値を基に将来価値を算出する際は、得られるであろう利益率を元に算出します。運用年数をnとし、∧nをn乗の意味とすれば、次のように表現できるでしょう。
- 将来価値=現在価値×(1+利益率)∧n
反対に将来価値を基に逆算する際は、価値を変換する際にどの程度の割引率が見込めるかに注目して計算します。つまり、割引現在価値はn年後の将来価値を基に次のように算出できるでしょう。
- 割引現在価値=n年後の将来価値÷(1+割引率)∧n
割引現在価値が必要になる場面
割引現在価値は、将来価値から現在価値を予測する必要がある場面で用いられます。将来的にどのような割合で利益が入るか、価値が増えているかという点は予測できても、現在の価値については予測ができない場面では、将来価値から現在の価値を割り引いて計算する方法が妥当だといえるでしょう。主な場面としては、次の2ケースを挙げられます。
- M&Aで企業価値を求めるとき
- 不動産を購入するとき
M&Aで企業価値を求めるとき
M&Aをして企業を買収する際には、企業に対して妥当と思われる価格をつけなくてはいけません。その企業が将来的な視野でどれくらいの価値を保有するようになるかという観点から、割引現在価値を求め、買収先と企業との交渉を進めていきます。将来的に多額の利益を生み出すと考えられる企業は、資産などから求める現在の価値よりも割引現在価値が高くなるでしょう。
割引現在価値を利用した企業価値の算出方法
M&Aにより企業買収をする場合には、何らかの方法で企業価値を数値として表現しなくてはいけません。単純に考えるのであれば、買収先の企業の資産から負債を差し引いて企業価値とすることもできるでしょう。
しかし、この方法では企業が持つ将来的な価値が考慮されていません。買収先の企業が持つ収益力に着目し、将来価値から逆算して割引現在価値を計算し、企業価値とすることができるでしょう。
なお、将来の収益から企業価値を求める方法を「インカムアプローチ」と呼びます。
割引現在価値を利用しない企業価値の求め方
割引現在価値を利用しないで企業価値を求める方法もあります。例えば、現在の純資産を企業価値とする「コストアプローチ」もよく使用される方法です。近い将来に合併などがあり、将来の価値を予測しにくい場合には、コストアプローチが利用しやすいでしょう。
また、類似する企業を探し、その企業の株価などを参考に企業価値を求める「マーケットアプローチ」も、割引現在価値を使用せずに企業価値を求めることができる方法です。
不動産を購入するとき
不動産を購入するときも、将来的に得られるであろう価値から現在価値を逆算することがあります。例えば、家賃収入が見込める収益物件の場合は、収益などを試算した上で割引現在価値に換算し、実際の価格と比較して購入すべきか判断することができるでしょう。また、収益物件以外にも、売却することで利益が見込める場合には、割引現在価値を求めて実際の価格と比較して購入すべきか判断することがあります。
割引現在価値を用いるメリット・デメリット
割引現在価値を用いると、現在の価値に、将来的に見込める利益を反映させることができます。割引率を算定し、その割引率に基づいた形で現在価値を計算していきましょう。
しかし、すべての場合において割引現在価値が有効な価値計算方法とはいえません。メリットとデメリットを理解し、場面に応じて使い分けるようにしましょう。
【メリット】将来利益を企業価値に反映
割引現在価値を用いるメリットは、将来利益を企業価値に反映できるという点です。単純に資産から負債を差し引いた形で企業価値を算出してしまうと、業績が良く将来的に多額の収益を得られる企業と、業績が思わしくない企業の現在価値が、同じになってしまいます。将来の利益を企業価値に反映させることで、企業価値をより正確に計算するようにしましょう。
【デメリット】不確実な利益を元に算出
将来的な価値から現在価値を求める方法は、企業の業績も反映できる合理的な企業価値算出方法です。しかし、将来価値はあくまでも「予想」であって、獲得が確実なものではありません。そのため、将来価値を大きく見積もると割引現在価値が大きくなり過ぎ、反対に将来価値を過小評価すると割引現在価値も過少に小さくなってしまう可能性があります。
企業価値は複数の手法で計算しよう
割引現在価値は企業価値のひとつとして活用することができますが、将来の収益を反映させているという利点がある一方で、不確実な利益に基づいているというデメリットがあります。企業価値を求めるときは、割引現在価値だけではなく、マーケットアプローチやコストアプローチなども用いて、複合的に判断していくようしましょう。
企業価値の算定はぜひご相談ください
M&Aを実施する際には、企業価値を正確に求める必要があります。自社が売却側になる場合であっても、相手企業が正確に自社の価値を評価しているのかをチェックするために、自社の企業価値を知っておくことが望ましいでしょう。
企業売却や事業売却をお考えの方は、企業価値の算定についてぜひ弊社にご相談ください。複数の手法で価値算出のお手伝いをいたします。