選択と集中とは多角化と真逆の概念!メリットデメリットと実践のコツ
選択と集中とは、特定の事業を選び、その事業に資本や人材などを集中して投入することを指します。多角化とは真逆の概念で、アメリカでは1980年代頃から実施されるようになりました。どのようなメリットやデメリットがあるのか、また、実践のコツについて見ていきましょう。
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選択と集中とは?わかりやすく解説
選択と集中とは、複数の事業を手掛ける企業が特定の事業を選択し、その事業に資本力や人力などの経営資源を集中して投入することを指す言葉です。アメリカでは1980年代から、日本では1990年代の後半から注目が高まり、実施されるようになってきました。
多角化から選択と集中への流れ
多くの事業からひとつあるいは少数を選ぶ「選択と集中」と、ひとつあるいは少数の事業から多くの事業を有する企業へと発展する「多角化」は、まったく逆の概念です。選択と集中の流れが生まれるまで、経済はまったく逆の方向の多角化へと動いていました。
アメリカでは1960年代から、日本では1980年代から多くの企業は多角化の流れに沿って進んでいます。関連する事業にとどまらず、まったく門外漢の事業も手掛けることも珍しくありませんでした。
しかし、1980年にアメリカの大手電機メーカー・GMが選択と集中を打ち出し、市場内で1位あるいは2位の事業以外はすべて手放したことにより大きな成長を遂げると、アメリカ国内でも、また日本を含む世界中の国々でも選択と集中を実施するようになったのです。
選択と集中のメリット・デメリット
多角化から選択と集中へと方向転換する企業が増えたのは、選択と集中に多大なメリットがあったからに他なりません。特に次の3つは選択と集中のメリットといえるでしょう。
- コスト削減につながる
- 組織内の連携が取りやすくなる
- コア事業に資金を集中できる
しかし、選択と集中を実施したことで、好ましくない側面が生まれることもあります。その中でも次の3点は選択と集中を実施する前に考慮すべきデメリットです。
- 優秀な人材の流出につながる
- 従業員のモチベーション低下を招く
- リスクが集中する
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
メリット1.コスト削減につながる
手掛ける事業が多いということは、それぞれの事業に別々のコストが発生するということです。例えば化粧品と食品、文房具を手掛けているメーカーであれば、それぞれ別の工場を保有し、それぞれ別の輸送手段を用いて別個の売り場へと運ばれます。それぞれにコストが発生するため、利益効率はどうしても下がってしまうでしょう。
しかし、文房具などの1つの事業を選択し、集中して事業を行うならどうでしょうか。工場や輸送手段、売り場が統一できるので、大幅にコスト削減できるでしょう。また、今まで食品や文房具に用いていた人材や資金を化粧品事業だけに投入すれば、利益効率の増大も期待できます。
メリット2.組織内の連携が取りやすくなる
事業を絞ることで、社内組織がシンプルになります。連携を取りやすくなり、企業が一体となって事業に専念することができるでしょう。
また、事務作業もしやすくなるので、人材をより必要としている部署に投入することができます。
メリット3.コア事業に資金を集中できる
複数の事業を手掛けている場合、そのすべてが利益効率が高く、なおかつ企業として思い入れの深い事業とは限りません。収益率が低い事業やあまり思い入れのない事業を切り離すことで、コアとなる事業に資金を集中し、大規模に業務を進めていくことができるでしょう。
業務の規模が大きくなるとさらに収益性が増し、多くの利益を生む事業へと発展する可能性があります。
デメリット1.優秀な人材の流出につながる
経営上、利益効率を高めてコア事業に資金を集中できる選択と集中は合理的な考え方といえます。しかし、切り離した事業に使っていた資金を選択した事業に投入することはできても、切り離した事業にいた人材が選択した事業への異動を希望しない場合、あるいは、事業ごと他の企業へ譲渡した場合は、人材流出につながるでしょう。人材流出、特に優秀な人材の流出は、企業側にとって大きな損失といえます。
デメリット2.従業員のモチベーション低下を招く
いきなり業務が変わることは、従業員側にとっては大きなダメージになり得ます。モチベーションが低下し、新しい業務に対して集中できない可能性もあるでしょう。また、存続する側の事業にいた従業員も、人員が増え、事業規模が大きくなることに対して戸惑いを感じ、モチベーションが低下する可能性があります。
デメリット3.リスクが集中する
複数の事業を手掛けている状態であれば、経営効率は良くなくても、リスクに備えることはできます。特定の事業の属する業界全体が不況になっても、ほかの事業から利益を得られるため、企業自体は存続し続けることができるでしょう。
しかし、事業を絞ってしまうとリスクを分散させることができませんから、残した事業が何らかの要因により困難を迎えた場合には、他で補填することが出来ず大きな打撃を受ける可能性もあります。
選択と集中を進める3つのコツ
リスクを抑えて選択と集中を実施するためのコツとしては、次の3つを挙げられます。
- 事業縮小ではなく事業譲渡を行う
- 事業譲渡のタイミングを見極める
- 必要に応じて合併や組織再編も実施する
1.事業縮小ではなく事業譲渡を行う
単純に事業を縮小してしまうと、今まで積み上げてきた実績やノウハウ、販路などがすべて無駄になってしまいます。事業を廃止するのではなく、他企業への譲渡を検討してみてはいかがでしょうか。事業譲渡を行うことで譲渡益が入れば、選択した事業に投入する資金を増やすことにもつながります。
2.事業譲渡のタイミングを見極める
事業譲渡のタイミングによっても、譲渡益は大きく異なります。実績がある程度あり、今後も成長する可能性がある状態であれば高額で買い取ってくれる企業が現れやすくなるでしょう。
しかし、経営状態が思わしくないだけでなく、業界全体が低迷している業種の事業であれば、買い手がなかなかつかない恐れもあります。事業譲渡のタイミングを見極め、少しでも高く譲渡できるように工夫しましょう。
3.必要に応じて合併や組織再編も実施する
選択と集中は、必ずしも事業規模を縮小するということを意味するわけではありません。現在運営している事業すべてが高収益を実現しているのであれば、合併や組織再編をすることで経営効率をさらに高め、より大きな企業へと成長していくことができるでしょう。
最初から「選択と集中ありき」で事業の見直しを行うのではなく、企業の状態を客観的に見つめ直し、柔軟に対応するようにしていきましょう。
事業譲渡・株式譲渡についてご検討の際はぜひご相談ください
会社が大きくなるほど事業の数も増えていきますが、自社の資源は有限ですから、どの事業にも無限に注ぎ込むわけにはいきません。特に、エリアを展開して人が大幅に必要になるものの採用が追い付かない、など人の問題で事業がうまく回らなくなることがあります。
その際には、事業の優先順位をつけて、選択と集中を実施することで経営効率を高め、より収益性を高めることが必要です。
事業譲渡、という選択肢を決断していなくても、選択と集中の実施を迷っているときは、ぜひ弊社にご相談ください。貴社の状況や意向にあった状態での売却方法や提携方法などご提案させていただきます。相談料や着手金なしに承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。