「エクイティ・ファイナンス」とは?手法やメリット、デメリットを詳しく解説
エクイティ・ファイナンスとは、株式を増やして資金調達することです。資金を借りて調達するデット・ファイナンスとは異なり、負債が増えないというメリットがあります。そのほかにどのような利点があるのか、また具体的な手法やデメリットについて見ていきましょう。
CONTENTS
エクイティ・ファイナンスとは?
エクイティ・ファイナンスとは、株式発行により資金調達することです。金融機関などから資金を借りて調達するわけではないため、負債が増えないというメリットがあります。また、株式として投資家に渡す場合、特に現金化する期限を決めないので返済期限がないという点も、企業にとっては優れた資金調達方法のひとつといえるでしょう。
エクイティとは日本語で「株主資本」のこと
そもそも「エクイティ(equity)」という英語は、日本語に訳すと「株主資本」という意味です。つまり、単に株式を表すストック(stock)とは異なり、株主が有する資産に主眼を置いています。そのため、エクイティ・ファイナンスという言葉は、企業が保有する株式数が増えるという意味ではなく、企業が保有する資本金が増えるという意味を含むと考えられるでしょう。
デット・ファイナンスとの違い
エクイティ・ファイナンスは株式という自己資産を増やして資金調達をすることですが、デット・ファイナンスは金融機関などからお金を借りること、言い換えれば他人資本を増やして資金の調達を行うことです。「デット(debt)」とは借金や負債を意味する英語で、デットを増やすと企業内の他人資本が増え、自己資本比率が下がってしまいます。
普通社債の発行により資金調達することもデット・ファイナンスの方法のひとつです。普通社債には償還日があるため、企業は普通社債を購入した人に対して、償還日までに普通社債の額面と利息を支払わなくてはいけません。
つまり、銀行からの融資であれ普通社債発行であれ、デット・ファイナンスを利用したときは、調達した資金に返済期限が定められることになります。エクイティ・ファイナンスで調達した資金には返済期限がないので、この点もデット・ファイナンスとエクイティ・ファイナンスの違いです。
エクイティ・ファイナンス4つの手法
エクイティ・ファイナンスは、株式を発行することで資金調達することです。しかし、株式を発行しただけでは資金を調達することはできません。発行した株式を何らかの手法で投資家や株主に渡し、現金によって買い入れてもらう必要があります。エクイティ・ファイナンスを行う具体的な手法4つについて見ていきましょう。
- 公募
- 株主割当の増資
- 第三者割当の増資
- 新株予約権付社債の発行
1.公募
発行した株式を株価に近い価格で販売することを「公募」といいます。公募を英語に訳した「Public Offering」の頭文字をとって「PO(ピーオー)」と呼ばれることも少なくありません。
すでに株式市場に上場している場合は、証券会社などを通して販売日を告知し、投資家を募ります。株価が高いときは、少数の株式を発行するだけでも多額の資金を調達できるでしょう。
2.株主割当の増資
上場している企業は、公募の形でエクイティ・ファイナンスを実施することが可能です。しかし、上場していない企業は証券会社を使って投資家を募ることはできません。そのため、すでに自社株式を保有している株主に直接声をかけて、保有している株数に応じて新規に発行する株式を購入する権利を割り当てることで、出資を募ることがあります。
ただし、株主は企業側から声を掛けられたからといって、必ずしも割り当てられた株式をすべて購入する必要はありません。一部だけ購入しても良いし、まったく購入しないという選択肢も可能です。
3.第三者割当の増資
第三者割当とは、株主かどうかは無関係に、特定の第三者に株式を購入する権利を割り当てることです。例えば取引先など、関係性を強めたい相手に対して第三者に割当を行うことができます。
また、株主割当の場合は実行後も各株主における株式の保有割合はほとんど変わりませんが、第三者割当の場合は保有割合が変わるだけでなく、株主数も増えます。そのため、意思決定が従来通りに進まず、運営に時間がかかるようになる可能性があるでしょう。
4.新株予約権付社債の発行
新たに発行する株式を予約する権利(新株予約権)がついている社債を発行することでも、エクイティ・ファイナンスを実施することができます。
通常社債であればデット・ファイナンスとなりますが、新株予約権付きの社債であれば現金として償還するのではなく株式として投資家に還元するので、自己資本を増やすことができるでしょう。
エクイティ・ファイナンスのメリットとデメリット
エクイティ・ファイナンスはデット・ファイナンスとは異なり、債務を増やさずに資金を調達する方法です。シンプルにいえば、株式を発行するだけで自己資本を増やすことができるので、企業にとっては多大なメリットがあります。特に次の2点は、エクイティ・ファイナンスを特徴づけるメリットといえるでしょう。
- 返済義務がない
- 自己資本比率が増える
【メリット1】返済義務がない
エクイティ・ファイナンスとは、自社で発行した株式を投資家に渡し、投資家から株式の対価を得る資金調達方法です。お金を借りて資金を調達しているわけではないため、返済義務がなく、また、返済期間もないというメリットがあります。
反対に、銀行などの金融機関でお金を借りて資金調達する場合、利益の一部を使って定期的に返済しなくてはいけません。そのため、企業成長に投入する資金はエクイティ・ファイナンスを利用した場合と比べて減ってしまうことがあります。
【メリット2】自己資本比率が増える
自社で発行した株式は、資本金の一部です。つまり、エクイティ・ファイナンスを実施することで自己資本比率を増やすことができるというメリットがあります。
自己資本比率が高いということは、金融機関やほかの企業からも「財務的に安定している企業だ」と判断されることになるでしょう。また、企業としての信頼性が高まることも期待できます。
一方で、次のようなデメリットもあるでしょう。
- 株主の反発を招く可能性
- 支配権に影響が及ぶ可能性
【デメリット1】株主の反発を招く可能性
エクイティ・ファイナンスは、株主にとってはあまり歓迎すべき資金調達方法とはいえないでしょう。例えば株主割当においてであれば、企業から割り当てられた株式を購入しても、保有株式数に応じて割当数が決まるため、企業内での発言権が高まるわけではありません。
また、割り当てられた株式を購入しないと、企業内での保有株式割合が減ってしまい、今よりも発言権が減る可能性もあります。株式数が増えて1株あたりの価値が薄まることも、株主にとっては喜ばしくない要素です。そのため、株主の反発を招く恐れがあり、企業側は事前に株主の理解を求める必要があるでしょう。
【デメリット2】支配権に影響が及ぶ可能性
第三者割当を実施した場合は、株主の株式保有割合が変わり、企業内での勢力図に大きな変化が起こることがあります。特定の第三者が新規発行株式の大多数を取得した場合であれば、企業の支配権が大きく変わり、今まで通りに意思決定を進めていけないこともあるでしょう。
エクイティ・ファイナンスを実施するときは、どの手法がもっとも合理的かつ企業成長に結びつくのか考える必要があります。
M&Aの活用方法
負債を増やさない資金調達方法として、エクイティ・ファイナンスは優れた方法といえます。しかし、株主から反発を受けたり支配権に影響が及んだりする可能性や、時間がかかる点には注意が必要でしょう。
エクイティ・ファイナンスが難しいときには、M&Aを活用することもできます。M&Aであれば比較的短い期間で資金調達ができるので、早めに資金が必要なときにも対応できるでしょう。M&Aの実施の際にはぜひ弊社にご相談ください。現状を丁寧に分析し、貴社に合う方法をご紹介いたします。