「プロキシーファイト」とは委任状争奪戦のこと!起こる状況・メリット&デメリットについて解説
プロキシーファイトとは、自身の主張を通すために株主たちから委任状を集める行為のことです。委任状を集めることで議決権を集めて要求を通します。具体的にはどのような手順で行われるのか、実施のメリットやデメリットについても見ていきましょう。
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プロキシーファイトとは議決権を巡る戦い
プロキシーファイト(proxy fight)とは英語で「委任状を巡る戦い」という意味です。
株主たちは保有する株数に従って「議決権」を持ちますが、必ずしも自分で行使する必要はありません。株主自身が議決権を行使しないときには、代理人に委任状を渡して、議決権の行使を委任することができるでしょう。
なお、委任状は、株主総会の開催を知らせる封書の中に入っていることがあります。委任状を使わずに株主総会に出席するか、委任状を使って然るべき人に議決権の行使を委ねるか選択しましょう。
株主が会社経営に不満を持つときに起こる
委任状の仕組みを活用すると、会社の経営に関わる問題に対して、株主個人の意見を通すことができます。例えば、株主総会で重要な決定がなされるためには、議決権の過半数あるいは2/3以上を集めなくてはいけません。
株主Aが自分の意見を株主総会で反映させたいときは、できるだけ多くのほかの株主から「私はAを代理人として定め、以下の権利の行使を委任します」などとAを代理人として定めたことが分かる委任状を受け取ります。全議決権の過半数あるいは2/3以上を集めることに成功すれば、会社経営に不満を持つ際にも、自分の望む方向に株主総会を進めていけることでしょう。
大株主の争奪戦でもある
地道に株主たちから委任状を集めて、過半数あるいは2/3以上の議決権を確保することもできます。しかし、1株しか保有していない小口の株主から委任状を集めていては、充分数の議決権を確保するのに膨大な時間がかかってしまうでしょう。
そのため、プロキシーファイトが起こると、まずは多数の議決権を有する大株主をターゲットとして委任状の争奪戦が起こります。大株主を多く味方につけることができれば、多くの議決権を確保し、株主総会での決定を思い通りに動かすことも夢ではありません。
通常はプロキシーファイト前に話し合う
通常はプロキシーファイトを実施する前に、経営陣と話し合い、お互いの主義主張を調整するための機会が設けられます。株主の意見を反映するために折り合う経営陣も少なくありません。
実際のところ、プロキシーファイトには手間がかかります。株主たちとコンタクトを取り、どのような意見を持っているのか説明し、賛同を得て、自分を代理人とする委任状を書いてもらわなくてはなりません。
また、自分と反対の意見を持った勢力も委任状を集めているなら、文字通り委任状の争奪戦が起こり、争いに負ければ、意見を通すことは叶わないでしょう。このような手間を省くためにも、時間を設けて話し合い、お互いの妥協点を探す努力が行われます。
プロキシーファイトの手順
会社側と株主側で話し合いをしたものの、合意が得られなかった場合は、プロキシーファイトへと進むことがあります。委任状の争奪戦は株主側が一方的に行うのではありません。会社側も委任状を集め、株主側の意見を阻むために画策します。
一般的に、手順は以下の通りです。
- 株主側による株主名簿の閲覧請求
- 株主側による委任状用紙の交付
- 会社側による議決権行使書の交付
- 株主総会の開催と決議
1.株主側による株主名簿の閲覧請求
委任状を集めるためには、誰が株主なのかを正確に知る必要があるでしょう。株主総会で通したい議案のある株主は、株主名簿の閲覧を請求し、ほかの株主たちの名前や住所などについての情報を獲得します。なお、すべての株主は、株式会社の営業時間内であれば、株主名簿の閲覧を請求、あるいは謄写を請求することが可能です。
2.株主側による委任状用紙の交付
株主名簿により株主の名前や住所を調べ、どの株主をターゲットにするのか決めてから、委任状用紙の交付を進めていきます。委任状用紙には議案に対して賛成なのか、また、委任状の争奪戦を行っている株主を代理人と指名するかどうかといった内容を記載することができるでしょう。
委任状用紙に不備があると、議決権とはみなされない可能性があります。何度も確認して、過不足のない用紙を作成しましょう。
3.会社側による議決権行使書の交付
一方、会社側も行動に取り掛かります。株主側は委任状用紙を送付して各株主にアプローチしますが、会社側は各株主に「議決権行使書」を送付して対抗するケースが少なくありません。
議決権行使書を利用すると、各株主は株主総会に出席しなくても議決権の行使が可能です。会社側の意見への賛成票を集め、株主側の主張が通るのを阻止します。
4.株主総会の開催と決議
株主総会での決議において、委任状や議決権行使書で集まった議決権の数や出席者の議決権の数などをカウントし、株主側と会社側のどちらの意見に支持が集まったのかを判定します。株主側の主張が通ったときには、要求の内容によっては、経営陣が対談に追い込まれることもあるでしょう。
なお、株主総会を開催する前に、新聞などを使って各株主に主義主張を訴えることも珍しくありません。少しでも多くの支持者を集めるために、株主側、会社側ができる限りの努力を行います。
プロキシーファイトのメリット・デメリット
プロキシーファイトを実施することで、過半数の議決権を有する大株主でなくても、会社の経営に関わる問題に対して意見が通ることもあります。このまま会社の経営陣に経営を任せておけば、会社そのものがつぶれる可能性があるときなど、プロキシーファイトを通して正しい方向へ軌道修正できることもあるでしょう。
とはいえ、プロキシーファイトは手間がかかります。メリットとデメリットを理解した上で、慎重に実施していきましょう。
【メリット1】株主の利益が優先される
プロキシーファイトを実施すると、会社側は株主側の利益に配慮し、できる限り優先するようになることがあります。プロキシーファイトが行われるということは、少なくない数の株主が会社に不満を持っているということです。トラブルを再び起こさないためにも、会社側は株主側の利益を優先する姿勢を見せるようになるでしょう。
【メリット2】企業価値の向上
本当に会社の利益を思い、会社が間違った方向に進むのを阻止するためにプロキシーファイトが実施される場合には、プロキシーファイトによって企業価値が向上することもあります。また、プロキシーファイトが実施されたことで会社側が気持ちを引き締めて経営を行い、より良い企業を目指して努力するようになることもあるでしょう。
【デメリット1】株価の混乱を招く
プロキシーファイトの際に、委任状ではなく株式の買い集めが実施されることがあります。株式を集めるということは議決権を増やすということですから、株主側にとっても会社側にとっても自分の主張を通すひとつの方策になるからです。そのため、株価上昇を狙って短期的に売買を行う投資家が現れるなど、株価が混乱することも少なくありません。
【デメリット2】事業停滞を招く
プロキシーファイトは、会社側にとっても手間がかかる案件です。肝心の事業がおろそかになり、企業成長が停滞することもあります。また、プロキシーファイトをきっかけに株主重視の経営スタイルに変わると、株主を重視するあまり企業成長が二の次になることもあるでしょう。事業が停滞し、株主にとっても好ましくない状態に陥る可能性があります。
会社経営のお悩みをぜひご相談ください
会社経営に対して株主が不満を持つときは、プロキシーファイトが起こることもあります。プロキシーファイトにはメリットもありますが、企業成長が鈍化したり株価が混乱したりとデメリットも少なくありません。
会社経営でお悩みがあるときは、ぜひ弊社にご相談ください。株主たちの賛同を得つつ、企業成長も優先する方法をご案内いたします。