アドバイザリー契約と仲介契約はどう違う?それぞれのメリット・注意点を解説

「アドバイザリー契約」とは、M&Aを実施する際にアドバイスや手続きのサポートを受ける契約です。一方「仲介契約」とは実際に相手側との間に入って価格や条件の交渉を進めてもらう契約です。具体的には何が違うのか、また、それぞれのメリットや注意点について解説します。

 

アドバイザリー契約と仲介契約の違い

アドバイザリー契約とは、その名の通りアドバイスを受ける契約です。契約内容によっても異なりますが、アドバイス以外にも相手企業との交渉や売却に必要な手続きなども任せることができます。

一方の仲介契約とは、相手企業との間に入り条件交渉を行う契約です。つまり、仲介契約では「売却側・仲介業者・買収側」の3者でM&Aが進んでいきますが、アドバイザリー契約では「売却側・売却側のアドバイザー・買収側のアドバイザー・買収側」の4者で進んでいきます。

アドバイザリー契約における交渉は、売却側のアドバイザーと買収側のアドバイザーの2者で行われることが基本です。

 

アドバイザリー契約のメリット

事業売却にはさまざまな業務が伴います。また注意すべき点も多いため、事業売却の専門家のサポートを受けることが望ましいでしょう。しかし、アドバイザリー契約を結ぶか、仲介契約を結ぶかによって、結果に差が出ることもあります。まずはアドバイザリー契約を締結した場合のメリットについて見ていきましょう。

 

  1. 提示した条件で交渉できる
  2. 内部情報が漏れにくい

メリット1.提示した条件で交渉できる

アドバイザリー契約を結ぶと、アドバイザーは売り手側企業の専属スタッフとして働くことになります。例えば売り手が「10億円で事業を売却したい」と主張したとしましょう。アドバイザーは買い手側企業と「10億円で売却する」という条件で交渉を始め、その他の価格では交渉を成立させません。売却時に価格などの譲れない条件があるときは、アドバイザリー契約が良いでしょう。

メリット2.内部情報が漏れにくい

アドバイザリー契約では、アドバイザーは売り手側企業の内情には精通しますが、買い手側企業の内部事情に触れるわけではありません。そのため内部事情が漏れにくく、売り手側の不利益になる情報がアドバイザーを通して買い手側に伝わることも少ないといえるでしょう。仲介契約の場合は、仲介者は売り手側・買い手側の事情に触れることになるため、情報漏洩のリスク対策を行う必要が生じることもあります。

 

仲介契約のメリット

M&A仲介業者などの業者に事業売却の仲介を依頼する場合には、仲介者は売り手企業と買い手企業の間に入って交渉することになります。そのため、専属のアドバイザーを依頼するアドバイザリー契約とは異なり、仲介者は売り手・買い手の双方の利益を優先させなくてはいけません。仲介契約を結んで交渉を進めていくことで、次のようなメリットを得られます。

 

  1. 売却先を探してくれる
  2. 短期間でM&Aが進みやすい

 

メリット1.売却先を探してくれる

仲介業者に依頼してM&Aを進めていくときには、売却先の選定も任せることができます。アドバイザリー契約では売却先の選定は業務に含まれないことが多いため、売り手側企業自身が売却先を見つけなくてはいけません。

しかし、仲介業者であれば売却先を探すことも依頼できるのです。相手企業が決まっていないときや、複数の候補から適した相手を選びたいときにも利用できるでしょう。

メリット2.短期間でM&Aが進みやすい

仲介業者に依頼してM&Aを進めるほうが、アドバイザーを介して進めるよりも短時間で完了することがあります。これは仲介業者は売り手企業・買い手企業の双方の利益を優先するため、お互いの希望条件からお互いが納得できる条件を提示し、交渉を進めていくことができるからです。

一方、アドバイザリー契約では、アドバイザーは買い手あるいは売り手のどちらか一方の専属契約です。そのため、買い手のアドバイザーも売り手のアドバイザーもどちらも依頼主の希望を主張し、交渉がまとまりにくくなって時間がかかる傾向にあります。できるだけ早く売却を実施したい場合も、仲介契約のほうが適しているといえるでしょう。

 

アドバイザリーや仲介契約書作成時の注意点

事業売却に際してアドバイザリー契約や仲介契約を結ぶときには「契約書」を作成します。契約書を作成するときには、次の4つのポイントに注意しましょう。

 

  • 報酬体系と見積もり
  • 秘密保持にういて
  • 契約期間について
  • アドバイザリー契約解除の条件について

それぞれ具体的にはどのようなことに注意すれば良いのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

 

報酬体系と見積もり

事業売却のアドバイザリーや仲介を依頼するときには、次のような費用がかかります。

  • 着手金
  • リテイナーフィー(月額報酬)
  • 中間金
  • 成功報酬

着手金は最初に、リテイナーフィーは毎月、中間金は相手企業との基本合意を得たとき、成功報酬は事業売却が完了したときに支払う料金です。業者によって料金体系が異なるので事前に確認しておきましょう。また、おおよその見積もりも受け取っておくと、費用面での不安がある程度解消されます。

秘密保持について

売却する際には、仲介者やアドバイザーに会社の内部事情を詳しく提供することになるので、秘密保持契約書を交わします。

秘密保持の範囲を明確に決め、どこまでならば交渉時に相手企業に伝えられるのか線引きしておく必要があるでしょう。

契約期間について

仲介契約、あるいはアドバイザリー契約がいつまで有効なのかについても契約書に含めておく必要があります。契約期間を定めないと、悪質な業者の場合は中間金を増やすために意図的に交渉を遅らせる可能性が想定されるでしょう。

また、事情によっては、どうしても契約期間内に売却が完了できないことがあるかもしれません。そのような場合に備えて、契約延長の条件について取り決めておくことも必要です。

アドバイザリー契約解除の条件について

アドバイザリー契約や仲介契約を結んだ後に、信頼を裏切られるような状況にならないとは限りません。例えば費用を水増しして請求されたり、相手企業に支払うはずの料金が支払われていなかったりする場合には、別の業者に変えることも検討できます。

万が一のことがあったときに備えて、契約書には契約解除の条件についても含めておきましょう。なお、契約は一方的なものではないため、業者側からも契約解除の条件を提示されます。報酬の支払いに遅滞があったときや、意図的に間違った情報を提供していたときなどは解除の理由になることがあります。

 

M&Aでお困りのことはご相談ください

アドバイザリー契約を結ぶと、専任のスタッフとして働いてもらうことはできますが、売却先を探すことができないため、相手企業が決まっていないときには利用が困難です。また、相手企業もアドバイザーを立てて交渉するので、条件が折り合わずM&Aの実現までが長引く可能性もあります。

できるだけ早く売却したい場合や売却先が決まっていないときは、仲介契約のほうがメリットが多いです。M&Aでお困りのことはぜひ弊社にご相談ください。お客さまの希望に沿ったM&Aをサポートしてまいります。

 

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