飲食業界のM&Aを成功させる│M&A事例を踏まえて成功のポイントを紹介
近年、飲食業界においてもM&Aが活発に行われています。新型コロナウイルスの影響や少子高齢化による顧客の奪い合い、労働力不足といった問題が解消されない以上、今後もM&Aを活用した業界再編の流れは続くことでしょう。
そこで本記事ではM&Aによる売却を検討されている飲食店経営者の方向けに、飲食業界において実際に行われた3つのM&A事例についてご紹介します。飲食業界におけるM&Aを成功させる為のポイントについても併せて解説しておりますので、それぞれの事例が成功した要因を考察しつつご覧下さい。
飲食業界におけるM&Aの動向
飲食業界におけるM&Aは、居抜きでの新規開業と比べて「売り上げや利益の予想がしやすい」「経営の安定化を図りやすい」といったメリットがあることから、近年は買い手側の企業や個人が増加傾向にあります。
近年行われたM&A事例としては、ゼンショーホールディングス(すき家)や株式会社プレナス(ほっともっと・やよい軒)といった、全国展開のチェーン店を運営する企業が取り組んだM&Aが有名です。
その一方で、中小企業や個人経営の飲食店においても後継者問題の解決や事業整理を目的としてM&Aを活用するケースが増えています。
M&Aによる売却を行う事で、従業員の雇用を確保しつつ採算の合わない店舗のみを売却し、経営状態の良好な店舗に経営資源を集中させる、といった選択と集中に取り組みやすく、経営上のメリットを得られるのです。
また上記の理由以外にも、「撤退コストの節約」や「譲渡利益の獲得」「コンセプトの異なる企業を買収する事による季節ごとの売り上げ安定化」など、さまざまな目的を達成するため飲食業界でのM&Aは有効な手段と考えられています。
飲食業界におけるM&Aを成功させる為のポイント
では次に、飲食業界におけるM&Aを成功させる為のポイントについて、売り手側の視点に立ちつつご紹介します。
- 売却先の企業を具体的にイメージする
- ビジネスモデルを整理して自店舗の特徴を買い手に伝える
- 店舗運営のマニュアル化を行う
飲食業界のM&Aを成功させるために特に重要となるこれらのポイントについて、詳しく見ていきます。
売却先の企業を具体的にイメージする
M&Aを成功させる上で、「買い手側がどういった買収目的を抱いているのか」をイメージする作業は欠かせません。
例えば、買い手が「人材確保」を目的としてM&Aに踏み切ったケースであれば、売却後もベテラン従業員が引き続き働いてくれる点や、効率的な人材育成の仕組みが整っている点をアピールする事で、好条件での売却が狙えます。
買い手のニーズは千差万別ですが、そのニーズを正しくとらえて、自社のどのような特徴が強みとなるのか整理しておくことが大切です。M&Aにおける売却を行う際には、買い手側の意図を想定したり、信頼できるM&Aアドバイザーと相談したりしながら、自社も相手企業もWin-Winの取引を実現しましょう。
互いにメリットを提示しあうことが、理想のM&Aに近づく第一歩となるのです。
ビジネスモデルを整理して自店舗の特徴を買い手に伝える
飲食業を営む店舗は、譲り受けた瞬間から多額のランニングコストがかかります。仕入れや水道光熱費、人件費、家賃などの支払いが発生するので、譲受後すぐに利益が出るような状態であることが、譲受企業の理想でしょう。
つまり、譲渡企業は「売却後にも変わらず利益を出せますよ」という状況を作っておく必要があります。飲食業は属人的な業種なので、経営者が変わればお店の雰囲気も変わってしまいます。それでもなお、変わらず売上を保ち続けるためには、「仕組み化」が欠かせません。
仕組み化のためには、自らが経営する飲食店のビジネスモデルを整理した上で、自店舗が持つ強みを分かりやすく買い手側に伝える事が重要です。そして、その強みが「自走し続ける」ようなシステムに落とし込んで、強みと併せて説明するのが良いでしょう。
また、飲食業においては、こうした「成功するビジネスモデル」が無意識のうちに成立していた、というケースも少なくありません。そのため、経営者自身では気づけないことも少なくないのです。
ビジネスモデルを正確に分析する為には経営やマーケティングに関する専門知識が必要となるので、M&Aアドバイザーへ相談する事をおすすめします。
店舗運営のマニュアル化を行う
人材の移り変わりが激しい飲食業界において、「再現性」を保てるか否かは重要な課題と言えます。同じ店舗で同じ材料とレシピを使ってメニューを提供する場合であっても、料理人や接客スタッフの違いが料理の味や店舗の雰囲気に影響を与えてしまうのです。
M&Aでは経営者が変わるので、マニュアル化が進んでおらず、属人的な経営手法を取ってきた場合は、M&A後にその違いが顕著に表れてしまうでしょう。
こうしたケースを防ぐにも、M&Aを行う際には特定の人材に頼りすぎないマニュアル化された店舗運営の体制を整える様に心がけましょう。これは先述した「仕組み化」の一つとも言えます。
新人スタッフやアルバイトの方のみでも運営を行える飲食店は、展開しやすい魅力的な飲食店として多くの買い手から注目を集める事ができるでしょう。
また、提供するメニューの味の再現性を高めたいのであれば、現在働いているスタッフが調理を行う工程を映像として記録する、買収後も継続して働く従業員が味を再現出来るまで繰り返し指導を行う、といった対策が効果的です。
飲食業界におけるM&A事例
先ほど紹介した飲食業界におけるM&Aのポイントを押さえた上で、実際に行われたM&A事例の中でも特に注目度の高かったものを順番に見てみましょう。
アクロディア、飲食店プロモーターから6店舗を譲り受ける
2019年、株式会社アクロディアは飲食店プロモーターが運営する6つの店舗をM&Aにより取得しました。
アクロディアの子会社であり同名の飲食店を運営する「渋谷肉横丁」ではM&Aによる飲食店経営に力を入れています。今回のM&Aで成長性と収益性に優れた6つの店舗を新たに譲り受けた事には、グループ全体の収益基盤を強化する狙いがあるとされています。
subLime、牛の達人を譲受
2018年8月、株式会社subLimeは都内を中心に焼肉店を展開する牛の達人を完全子会社する契約を締結しました。牛の達人は店舗数こそ少ないもののブランド力に定評のある店舗です。
M&A戦略に長けた飲食グループであるsubLimeにとっても初の焼肉業態取得となる今回の買収には、経営ノウハウの提供や店舗オペレーション力の強化による事業領域・収益拡大といった効果が期待されます。
日本KFCホールディングス株式会社
「ケンタッキーフライドチキン」の運営元である日本KFCホールディングスは2018年、和食居酒屋「えん」や「おばんざい・炙り焼き・酒 菜な」を展開する株式会社ビー・ワイ・オーと資本業務提携を結びました。
国内・海外での和食店舗運営と全国的なフランチャイズ店舗の展開という業種も業態も異なる企業同士のM&Aにより、新たな事業機会が生まれる事が予想されます。
株式会社プレナス
2016年12月、「ほっともっと」「やよい軒」を運営する株式会社プレナスはサプライチェーン強化による生産コストの削減を目的として、調味料やインスタント食品の製造・販売を行っている宮島醤油フレーバーを子会社化しました。
宮島醤油フレーバーが有する独自の調味料開発技術を、実店舗で提供されている調味料に活かす事で、更なる味の改善と新規顧客の獲得が期待されます。
飲食業界の特徴や事例を押さえてM&Aを成功させる
本記事では飲食業界におけるM&A事例の中でも特に知名度の高いものをご紹介し、飲食業界におけるM&Aの現状や、売り手としてM&Aを成功させる為のポイントも併せて解説してまいりました。
飲食業界は少子高齢化による顧客の奪い合いや労働力不足といった経営課題を抱えており、これらの課題解決手段としてM&Aが利用されるケースは今後も増加すると予想されます。
どのような背景、経営状態であっても、実際にM&Aを検討してみることには大きなメリットがあります。自社を客観的に分析したり、専門家のアドバイスを受けられたりといった経営上のメリットも存在しますし、仮に買い手があらわれた場合は創業者利益を得ることも可能です。
まずは一度、スモールM&Aに特化した弊社へ無料でご相談ください。現在のご状況について、お話をお伺いいたします。