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美容業界におけるM&A事例|美容企業のM&Aを成功させるポイントを解説

M&A(企業の合併・買収)は、後継者不足や過当競争による経営不振といった、美容業界の抱える問題を解決する為に有効な手段の1つです。特に近年では美容業界においても、規模の大小に関わらずM&Aが積極的に行われつつあります。

ですが、M&Aにより多くの買い手を募り、またより高額な売却益を得る為には、売却対象である美容室が、M&Aの譲受企業にとって魅力的なアピールポイントを備えている必要があります。

そこで本記事では、M&Aにおけるポイントについて解説した上で、実際のM&A事例を参考に美容業界におけるM&Aを成功させる方法について考察してまいります。

美容業界におけるM&Aの実情

近年、美容業界におけるM&Aは増加傾向にあります。具体的な事例としてはAguグループやL.B.Gといった大規模な美容院経営を行う組織を対象としたものが有名ですが、小規模の美容院でも問題解決の手段としてM&Aを検討するケースが増えつつあるのが現状です。

ご存知の通り、美容業界は小規模店舗がひしめき合う過当競争の業界であり、後継者不足高い離職率といった経営上の問題を複数抱えています。加えて、美容室を経営するオーナーの方はスタイリストを経てそのまま経営者になるケースが多く、経営に関する詳しいノウハウを持ち合わせていないのが特徴です。

こうした事情から、後継者問題の解決や経営不振からの脱却、そして売却によるリタイア後の資産確保を目的として、M&Aによる売却を検討する美容室オーナーの方が年々増えつつあるのです。また、買い手としてもM&Aにより競争力の強化や人材の確保といったメリットが得られるという事もあって、近年では海外ファンドによるM&Aも行われています。

M&A による美容室売却を成功させる為のポイントとは?

では次に、M&Aによる美容室の売却を行う際に、より多くの買い手から注目され、より高い価格で買い取ってもらう為に満たすべき3つのポイントについてご紹介します。

固定客を確保して事業シェアの向上を目指す

M&Aにおいて買い手がまず注目するポイントは、その店舗が事業地域内でどれ位のシェアを獲得しているのか、という点です。そして、これは他業種にも共通して言える事ですが、一定のシェアを継続して獲得する為には固定客をどれだけ確保出来るのかが非常に重要となります。

譲渡先の企業と交渉を行う際に、事業シェアや固定客の数を基にした具体的な収益予測を算出できれば、買収するメリットをイメージしてもらいやすく、意欲的な買い手とのマッチングが果たせます。

また、具体的な集客施策があれば、よりイメージしやすいでしょう。例えば、期間限定クーポンの配布SNSによる定期的な情報発信を通してリピーターを獲得する努力が見えれば、「この店舗は収益性が高い」と買い手に理解してもらいやすくなるのです。

組織的な体制を備えている

M&Aによる売却を図る際には、「自店舗の魅力とは何か?」「どの様なサービスを展開すれば多店舗との差別化に繋がるのか?」といった様に、自らが経営する店舗のビジネスモデルを整理した上で、買い手に伝える必要があります。

それだけでなく、美容業界は人材の流動性が特に高い業界なので、「特定の個人に頼らずとも組織として効率的に機能する体制が整っている」というアピールポイントは売却を進めるうえでは非常に有利なポイントになります。

従業員にとって働きやすい店舗を心がける

美容業界におけるM&Aにおいて、買い手側は「凄腕の美容師が働いているか」以上に「必要な人材を安定して確保出来ているか」を重視します。

人材の流出入が激しい中でも一定数のスタッフを確保するために、「給与水準や福利厚生を見直す」「スタイリストからオーナーへのステップアップをサポートする仕組みを整備する」といった、従業員が働きやすい店舗作りを日頃から心がける様にしましょう。

では、これらのポイントを踏まえた上で、実際のM&A事例と共に美容業界におけるM&Aを成功させる為の方法について以下で読み解いていきましょう。

美容業界におけるM&A の具体例

近年、美容業界においても大規模なM&Aが行われる様になりました。その中でも特に注目度の高かった3つの事例について以下でご紹介しますので、先ほど申し上げた「美容業界におけるM&Aを成功させる為のポイント」を各事例が満たしているかに着目しつつご覧下さい。

CLSAキャピタルパートナーズによるAguグループ買収

2018年に国内最大手の美容室チェーン「Aguグループ」を運営する「ロイネス」および「B-
first」を、香港系投資ファンドであるCLSAキャピタルパートナーズが約100億円で買収した、美容業界におけるM&Aの中でも特に規模の大きな事例です。

Aguグループは独自のフランチャイズ事業の仕組みを強みとして2011年の設立以来、急速に店舗数を拡大していきました。

そこに今回のM&Aによる管理・企画機能の拡充や組織機能の強化が加わった結果、2019年10月時点でAguグループの店舗数は400店舗を突破。更なる店舗拡大を目指し、IPOによる信用力アップと人材確保を進めるとしています。

参考:株式会社ロイネス、B-first 株式会社とサンライズ・キャピタルの資本提携について│CLSA キャピタルパートナーズ

ヤマノホールディングスによるL.B.Gの買収

ヤマノホールディングスは2019年8月、首都圏を中心とした美容室展開を行っている株式会社L.B.Gと株式譲渡契約を締結し、連結子会社化する事を発表しました。

ヤマノホールディングスではファミリー層・中高年層をターゲットとした低中価格帯の美容室を展開しています。一方のL.B.Gは、20~30代の女性をターゲットとした中高価格帯の美容室を、首都圏を中心に運営する会社です。

この事例はヤマノホールディングスが、「WEBマーケティングを活用した高い集客力」や「優秀なスタイリストの確保・早期育成」といった強みを持つL.B.GとのM&Aを通して、自社グループの祖業である美容事業全体の成長を図ったケースであると言えます。

参考:株式会社L.B.G(美容室運営)が当社グループ入りしました│株式会社ヤマノホールディングス

エムエイチグループによるワーク・ワークスの買収

美容室「モッズヘア」を運営する美容室チェーン「エムエイチグループ」が横浜市で2店舗の美容室を経営する「ワーク・ワークス」を子会社化した、比較的小規模のM&A事例です。

このM&Aによりエムエイチグループは自社エリアである東京23区から横浜への店舗拠点拡大、ワーク・ワークスは大手企業の子会社化となる事による経営基盤の強化、といった利益をそれぞれ獲得しました。

参考:有限会社ワーク・ワークスの株式の取得(子会社化)について│株式会社エム・エイチ・グループ

美容業界の特徴や事例を押さえてM&Aを成功させる

本記事では美容業界におけるM&A事例をご紹介しつつ、それぞれの事例をもとに「美容業界におけるM&Aを成功させる為のポイント」について読み解いてまいりました。

今回取り上げた3つの事例からも分かる通り、美容業界におけるM&Aを成功させる為には、売り手側の企業や店舗が、買い手側企業のニーズを満たせるだけの「強み」や「特色」を備えていることが必要となります。

自身が経営する美容室の売却について検討中の方は、実際の売却手続きに入る前に、専門家への相談や情報収集・組織改革といった手段を活用して、本記事でご紹介した「M&Aを成功させる為のポイント」を自店舗がクリアする様に心がけましょう。

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