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教育業界の将来を左右する戦略的M&A│背景と事例を詳しく解説

少子高齢化の煽りを受けながらも、様々なニーズに対応しながら成長を続けている教育業界。業界再編や経営戦略の一環としてM&Aも盛んに行われており、近年はますますM&Aに取り組む企業が増加しています。この記事では、教育業界でのM&Aを検討している経営者様向けに、同業界でのM&A事例を踏まえて、M&Aを成功させるためのポイントについて詳しく解説していきます。

教育業界におけるM&Aの背景

ここでは教育業界の市場概況や、市場の状況により教育業界のM&Aがどのような背景で行われているかを簡単に解説します。

教育業界の市場概況

日本の教育業界の状況を把握するのに重要な点は、日本国内において少子高齢化が進んでいるという状況です。

2019年の児童数は637万人であり、1958年の1349万人に比べると半減しています。特に出生率の低下と併せて児童数は継続的に減少傾向にあることは留意すべきポイントです。

ただし、このような状況においても、社会人向けの教育ニーズの高まりなどを受けて教育市場は近年拡大している傾向にあります。矢野経済研究所の教育産業白書2019年版では、2018年度における教育産業の市場規模は2兆6794億円とのことです。

この背景には、大きく3つの要因があると考えられます。

一つはオンラインで行う教育市場の拡大。もう一つには、学校外での教育(塾や家庭教師など)のニーズが高まっていることが考えられます。さらに、社会人学習のニーズが高まっており、児童数は減少しているものの、副次的に教育に関するセクターが伸びていることが挙げられるでしょう。

M&Aの背景

日本の教育業界におけるM&Aの背景は、少子高齢化に伴う児童数の減少や、それに派生して生じる顧客である生徒の奪い合いの激化により、市場でのシェアを維持することが肝要になっていることが挙げられます。

そのため大手の塾運営企業は、類似領域の企業を買収してシナジーを追及したり、新たな顧客の取り込みを行うために積極的にM&Aを検討しています。

具体的には、オンラインでの社会人の学習ニーズや、英語学習のニーズの高まりに伴い、従来の塾市場以外にもオンラインコンテンツの充実を図りたい、というようなニーズが散見されます。
また、シンプルに顧客の幅を拡げる(たとえば、高校生をターゲットとしていた企業が、未就学児をターゲットとする市場に参入するなど)ことも多くあります。

つまり、M&Aに取り組む企業はリソースの拡大を目指しており、不採算事業の売却や新規事業の買収を通じて、成長を模索しているのが教育業界におけるM&Aの背景です。

教育業界における事業会社同士のM&A事例

ここでは教育業界でのM&A事例を、買い手のタイプが事業会社なのか投資ファンドなのかという2つのケースに分けて紹介していきます。まずは、事業会社同士のM&A事例について見ていきましょう。

ベネッセホールディングスによる、スタディハッカーの株式取得

2020年1月に、ベネッセホールディングスはENGLISH COMPANYや自習型英語学習ENGLISH COMPANY THE CONSULTANTを運営するスタディハッカーの発行済株式の50.1%を取得し、同社は正式にベネッセホールディングスの連結子会社となりました。

ベネッセホールディングスは、子会社のベルリッツにて英語学習の事業を運営しており、英語学習事業とのシナジーが見込まれるとして当該株式取得を実行しました。

参考:スタディーハッカー、4/13の株式譲渡によりベネッセグループの連結子会社に│PR TIMES

ナガセによる四谷大塚の買収

2006年、東進ハイスクール等を運営するナガセは首都圏を拠点とした中学受験進学塾の四谷大塚(同)と、関連会社の四谷大塚出版(同)を鈴木靖夫四谷大塚社長ら株主から、10月2日付で両社の全株式を取得しました。

四谷大塚グループは中学受験の指導や教材、公開テストに定評があります。1958年に設立され、2005年9月期の売上高は67億円。ナガセは買収で中学受験部門を強化し、グループの総合力を高める狙いで当該買収を実行しました。

参考:進学塾の四谷大塚買収へ/「東進」運営のナガセ│四国新聞社

増進HDによる栄光HDに対するTOB

2015年、通信教育「Z会」を手がける増進会出版社(静岡県長泉町)は19日、学習塾の「栄光ゼミナール」などを展開する栄光ホールディングスを子会社化。

栄光HDの買収で増進会の連結売上高は600億円を超える見通しとなり、当該TOBを通じた買収により、大学受験に強い増進会と、小中学生指導をコアビジネスとする栄光ホールディングスの間で教育をトータルサポートする体制を整えました。

生徒の囲い込みが期待でき、また、栄光が強みとする対面教育のノウハウや教材の販売力を生かし、教育サービスの競争力を強化しています。

参考:「Z会」の増進会出版社、栄光HDにTOB│日本経済新聞

ナガセによる早稲田塾の買収

2014年10月、東進ハイスクール等を運営するナガセは、10月27日、サマディが管理・運営する「早稲田塾」事業の会社分割等により設立される新設会社の株式を取得し、子会社化することを決議しました。

少子化や学習塾の競争環境の激化により、年々厳しさを増す市場において、共に次世代のリーダー育成を目指すナガセとサマディがノウハウ共有を通じ、総合力・競争力を強化することを目的として当該M&Aが実施されました。

参考:ナガセ、早稲田塾を20億円で買収 運営会社から│日本経済新聞

プライベートエクイティファンドによる教育業界のM&A事例

上記では教育事業を営む同業同士の買収に関して紹介してきましたが、プライベートエクイティファンドによる買収も昨今いくつかみられるので、下記の通り紹介していきます。

プライベートエクイティファンドは事業会社とは異なり、割安に評価されている企業や、企業価値増大が見込める企業に対して一定のあいだ投資を行い、経営再建を果たします。そして、企業価値を高めたのちに売却することを目的にM&Aを行っているので、一般的な事業会社のM&Aとは意図が異なります

具体的にどのような事例があるのか、見ていきましょう。

アドバンテッジパートナーズによるやる気スイッチの買収

アドバンテッジパートナーズは、SPCを通じて「スクール IE」で有名なやる気スイッチグループを買収しました。やる気スイッチは個別指導塾・英会話スクール・幼児教育・民間型託児保育などの運営を直営およびフランチャイズの形態を行っています。

当該買収では、株式会社リンクアンドモチベーション(以下「リンク社」)と創業者である松田 正男氏が出資を行いました。社長も続投することが決定され、経営基盤の強化と将来的なIPOを目標に、ファンド傘下で更なる成長が期待されています。

このように、赤字企業であったり、経営不振に陥った企業であっても、M&Aを契機に再スタートを切るケースが多く見られます。経営状況によって適切なM&A手法が変わってくるので、ぜひ様々な事例に触れてみましょう。

参考:アドバンテッジ・パートナーズがやる気スイッチHを買収│日本経済新聞

雄渾キャピタルパートナーズによる湘南ゼミナールの買収

湘南ゼミナールは、首都圏および愛知・岐阜に224校舎を有する横浜市発祥の学習塾。2020年11月にはICTを活用した教育サービスを展開する新潟県の株式会社スプリックスに対して全株式を譲渡しました。

この決定を下したのが、プライベートエクイティファンドである雄渾キャピタルパートナーズです。湘南ゼミナールは2017年にMEBOを実行していましたが、その際に雄渾キャピタルパートナーズは資本参画しており、同社の継続的な発展成長を支援するべく支援を続けてきました。

その結果、企業の磨き上げに成功し、本事例のM&Aを成功させたと言えます。

参考:株式会社湘南ゼミナールの株式譲渡について│雄渾キャピタル・パートナーズ株式会社

教育業界のM&A事例から成功のポイントを読み解く

新型コロナウイルスの影響を受けて、スモールビジネスと呼ばれる教育や飲食、美容といったジャンルでは赤字廃業が目立ってきていますが、M&Aを初めとした様々な方法で、廃業を回避し、創業者利益を獲得できます。

また、教育業界は少子高齢化社会と同業同士の厳しい競争環境にさらされているものの、安定的な成長が見込まれる市場であり、シナジー効果を狙った買収が多く行われている特徴があります。

投資ファンドのような金融プレイヤーも買収に参加していることからも、マーケットとして今後も注目を集めていくでしょう。ぜひ自社の強みや特徴を客観的にとらえ、今後の経営判断に活かしてまいりましょう。

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