【M&A事例】都内保育園 株式譲渡までのストーリー(後編)|Cheer plus株式会社 創業者 井上愛美さんインタビュー(M&A事例/事業売却事例)

前編に引き続き2019年を自身で立ち上げた保育園事業を譲渡された井上愛美さん(前編はこちら)です。井上さんは、一橋大学法学部卒業後、新卒で外資系コンサルティング会社に勤務。大手インターネット事業会社に転職後、Cheer plus株式会社を創業。都内でのプリスクール一体型保育園サニーキッズインターナショナルアカデミーを運営。事業を成長させてきましたが、事業が軌道に乗り出した2019年のタイミングで上場企業への譲渡を決めました。後編となる今回は、売却意向を固めてからどのように譲渡先を探し、実際の譲渡に至ったのか。具体的な動きやその時のお気持ちについて伺いました。

ー第三者承継(売却譲渡)をしようと考えてから、どう行動しましたか?

井上さん:
 まずは希望する譲渡先企業のイメージを固めました。サニーキッズ運営はレッスン・保育・外国人雇用など多くの要素があります。譲渡後にスムーズに安定した運営をしていただくために、知育、認可・認証保育園運営とプリスクール、外国人雇用のナレッジがあり、そして資本力がある会社・お客様とスタッフが安心する意味で名前が通っているような会社がいいと考えました。

 次に情報収集のために、M&Aや事業承継をサポートする会社を調べ数社に連絡を取りました。
一社目は保育園の売却サポート経験が豊富な小規模の会社です。お会いした途端「申し込む場合はこちらの書類にサインして」と、作業というか多数案件の一つとして取り扱われる印象を受けました。二社目は大手の会社です。初回面談には三名がスーツでいらっしゃいました。名刺交換、ご挨拶から、パンフレットでのサービス説明、情報ヒアリングまでスマートな印象を受けましたが、「社長は大手企業への売却を希望されているが、一店舗では難しい。せめて三店舗以上やっていないと。」「社長が業務にかなり入っているので、経営引継ぎ後の心配をされると思う」など、私の会社の売却の難しさを指摘されました。

 M&Aサポートの会社に問い合わせるのと同時に、譲渡先企業も自分で探していました。起業した会社は自分の子どものようなものなので、できれば私が内容をよく知って安心してお任せできる企業に譲渡したかったからです。以前から経営の相談に乗ってもらっていた先輩がいる大手英語保育園A社に直接連絡を取ったところ、興味を持っていただき交渉を開始することができました。M&Aサポートの会社に問い合わせはしたものの、必要に応じて弁護士や税理士の力を借りながら基本は自力で進められる気がこの時はしました。なので、まずは一人でA社との交渉を始めました。

 A社の方々の対応は親切で紳士的で順調に進んでいました。しかし、A社は事業買収の経験が豊富で、専門家チームで打合せに来られます。それに対して、こちらは無知な素人の私一人。提示価格や提示条件、譲渡後の運営の話が出てきたあたりで少し不安が生まれてきました。この条件は一般的に正しいのか、いろいろな面で交渉余地あるのか、譲渡後の運営についてどこまでお願いしていいのかなど。様々な不安や迷いが押し寄せてきたのです。

 

ー途中から、事業承継通信社のサポートを受ける形に変わりましたね。

井上さん:
 はい、そのような中、知人だった若村さん(事業承継通信社)にご相談したら駆けつけてくれました。 これまでの起業から経営上の悩んできたこと、不安や迷い、体調面など、じっくり耳を傾けて受け止めてくれました。

 私は事業譲渡にプロのサポートが必要だと感じ始めていましたが、事業承継通信社様が当時創業したてだったこと、途中まで自身で進めているにもかかわらず一律の料金体系が依頼のネックでした。若村さんは私の心配要素を取り除く形でサポートの提案をしてくださりました。

・プリスクールの売却サポート経験がある優秀なパートナー(M&Aコンサルティングの依田氏)にも声をかけ、プロジェクトチームを組みサポートする
・A社への直接交渉に関して、セカンドオピニオンでサポートする
・万が一A社がうまくいかなかった時に備え、条件に合う他のB社、C社などの譲渡先探しも同時に進める 

 なので、事業承継通信社様のプロジェクトチームにサポートを依頼することに決めました。

 そこからは本当にスムーズでした。ずっと一人で不安や疑問を抱えやってきたことが、こまめに相談できアドバイスをもらえることで気持ちが楽になり、A社との交渉も順調に進みました。A社との交渉は、最終局面で、A社側の人事的事情で破談してしまいました。しかし、その時に備えてプロジェクトチームが交渉しておいてくれた上場企業である会社さんが積極的になってくださいました。なので、破談で特に落ち込むこともなく気持ちを切り替えて進めることができました。そのあとデューデリなどいくつかのステップを踏み、譲渡契約に至りました。 

 契約日に契約書に押印するタイミングまで、覆ったらどうしようかと不安でした。引継ぎ先の企業様、プロジェクトメンバーの皆様に囲まれて捺印した瞬間、自然に涙が溢れ止まらなくなりました。その帰り道、プロジェクトメンバーの皆様とお昼を一緒に食べ、初めて、ほっとしたことを覚えています。

―一連の会社譲渡のプロセス、今振り返っていかがでしょうか?

井上さん:
 みんなで話し合いながら、そして都度、軌道修正もしていきながら、結果として一番良い譲渡先を選ぶことができ、とても納得感がある事業譲渡でした。書類や手続きのアドバイスも的確で、私が言語化できていない悩みにも気づいてアドバイスをくださったり、悩んでいる時に電話をかけてきてくれたり。このチーム(事業承継通信社の若村・柳とM&Aコンサルティング 依田氏)は、人柄の良さ、スピーディーさ、的確なアドバイスを兼ね揃えていました。とても親身で安心して進めることができました。

 会社譲渡って、さぞ大変だったでしょうと言われます。でも、支えていただいていたので実はそうでもなくて。プロジェクトチームの皆さんのおかげです。とても感謝しています。

▼前編はコチラ▼
▼井上愛美さんのブログ記事はコチラ▼

取材・執筆:事業承継通信社編集部

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