【中編】マンション買うのとM&Aは一緒! 「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」著者・三戸政和が語るM&Aの正体。

▼前編の記事はこちら▼

東京 VS 地方、M&Aの突破口は?

ー東京と地方のM&Aの違いは、どういった点にありますか?

当たり前のことですが、地方に比べると東京の方が情報が流通しやすいため、売り手・買い手ともに有利だと思います。

また、同じビジネスをやっていても、遠方であれば管理コストが高くなります。
東京からカバーすると考えれば、地方は余分に管理コストがかかります。

買う会社に資産が付いてくるといっても、評価しにくいエリアの広い土地だったりすることもよくあります。

福岡など、特殊なエリアを除くと、ほとんどの地方が同じ課題を持っているでしょうね。

 

ー地方に希望はないのでしょうか・・・?

そんなことはないと思いますね。

「地元で残ってやりたい」というようなタイプの買い手が少なからず地方にはいますし、増えていると思います。自分の地域に戻るためのIターン、Uターンのきっかけとして、M&Aを選ぶパターンもあるはずです。

そのため、売り手側としては財務諸表的な目線以外の売り方も想定したほうがいいです。

社会貢献的モチベーションで仕事をしたい買い手と、いかに出会うかは、常に意識した方が良いと思いますね。

ー地方でよくある問題やトラブルはありますか?

 
地方では、競合に売りたくない、 同じ地域で売りたくないというケースはとても多いですね。

「同じ商工会議所の佐藤に買われるのは・・・」みたいな。

逆もしかりですが、「山田があそこの会社を買うらしい」といったように、売買確定の前に情報が出てしまうゆえのリスクはつきまといます。情報だけ抜かれてしまうと、その地域で生きていけない、ということもあるので、きちんと想定して動く必要はあると思います。

またご自身で事業をやってきたプライドや、関係する取引先や従業員などが複雑に絡み合ってきます。ある程度の割り切りは必ず必要だと思った方がいいですね。

 

ーその点においては、東京は恵まれているということでしょうか?

東京・関東にも商工会議所はありますし、同じような問題はあります。

ただ、東京は会社の数も多く、人の数も多いので逃げやすいというか、動きやすいという見方はできると思います。

また、我々のようなファンドや大企業といった「違う買い手」も存在するので、しんどさの割合は若干下がるのではないでしょうか。

とはいえ、東京のベンチャーもコミュニティ化がすごく進んだので、 誰が誰にエグジットしたか・・・みたいな話も大体分かってしまうようにはなってきましたね。笑

経営者は、いつから売ることを考え出す?

ーM&Aの出口を想定して会社をつくる経営者は、どのくらいいるのでしょうか?

増えてくるとは思いますが、あまりいないでしょう。

日本のカルチャー的なものもあると思いますが、 例えば、離婚を考えて結婚しないですよね、という話とほぼ同じだと思います。笑

これも普遍的な話ではなく変化してきていて、最近、離婚率って3割くらいになってきていますよね。さらにもう3割くらいは家庭内別居みたいな・・・?笑(個人の印象です)

つまり、仮説レベルでしかありませんが、日本の半分以上が離婚状態とも言えるじゃないですか。

となってくると今後は、「離婚を考えて結婚する人」、つまり出口を考えてから結婚する人が増えてくるかもしれないですよね。M&Aを想定した出口戦略についても一緒だと思います。

例えば、三木谷さんや藤田さんといった世代の経営者が目指した出口はみんな、IPOでしたよね。

エグジットと言う言葉が出始めたのは最近のことなんです。

以前は、どのベンチャーもエグジットを想定せずに立ち上げ、エグジットを選ぶこと自体が、下手すると「経営者の逃げ」、 みたいな感じにすらなっていたと思います。

東京のベンチャーも、事業を数十億で売却し、 シリアルアントレプレナーとして、またビジネスを立ち上げたり、 エンジェル投資家として活躍して・・・

というような、良い好循環事例やエグジットの選択肢が事例として増えたので、
身近な選択肢になったのだと思います

中小企業レベルでのM&Aが流通していくには、商工会議所での友達が上手く売却をした、というような分かりやすい身近な具体例がたくさん出てくる必要がありますよね。

 

ーうまく事業を売却を進められる経営者とは、どんな方でしょうか?

中小企業・ベンチャー企業など1000人くらいの経営者を見てきましたが、 動く人は何をやっていても動きますし、動かない人って何をやっても動かないと・・・。

性質・性格なのだとは思いますが、会社を作る時にちゃんと動ける人は、会社を売る時も同じようにちゃんと動きます。

また動ける経営者は、会社を売るということに対して、そんなに悩まない傾向にあります。

悩む前に情報を取りに行く

では、どこに取りに行くのかというと、RPGゲームのように片っ端から聞いているんですよね。

動けない人は情報漏れを心配しますが、動く人は、伝え方を工夫しながら進めていきます。動けず、悩む経営者が売ることは難しいと思います。

 

ー動ける人が、売れると。

M&Aや事業承継は、いま過渡期にある業界です。

なんとなくみんなよく分からないという状況の中で、どんどんアクションしていける人と、様子見て、という人や思考停止しちゃう人との差は大きく出る気がしますね。

答えが出てきてしまったり、身近に成功した人たちが出てきたら時期的にも遅いですし、やりやすくはなっていても旨みは小さくなります。

ー売り手の経営者にとって、必聴の内容となって参りました。
ついに後編では、売り手にとってのM&Aの別の価値についても伺います。

 

▼前編・後編の記事はこちら▼

取材・インタビュアー:事業承継通信社/若村 雄介・柳 隆之

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