【前編】マンション買うのとM&Aは一緒! 「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」著者・三戸政和が語るM&Aの正体。

今回は、ベストセラー作家であり、日本創生投資の代表取締役でもある三戸政和さんのインタビューです。

M&Aが身近にならないのはなぜか、東京と地方の違い、売り手となり得る経営者が知るべきことなど、様々な角度でお話を伺いました。

三戸政和さんプロフィール

 

1978年兵庫県生まれ。同志社大学卒業後、2005年ソフトバンク・インベストメント(現SBIインベストメント)入社。ベンチャーキャピタリストとして日本やシンガポール、インドのファンドを担当し、ベンチャー投資や投資先にてM&A戦略、株式公開支援などを行う。2011年兵庫県議会議員に当選し、行政改革を推進。2014年地元の加古川市長選挙に出馬するも落選。2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行っている。また、事業再生支援を行う株式会社中小事業活性の代表取締役副社長を務め、コンサルティング業務も行っている。

マンション買うのと、M&Aは一緒?

本では、なぜ「サラリーマン」を強く押し出されていたのでしょうか?

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特に「サラリーマン」にこだわりがあったわけではないんですよね。

ただ、日本のサラリーマン人口はとても多いですし、これからどうする?と感じ、モヤモヤしている人も多くいます。 きっと、人生の選択肢としてのM&Aについては 「よく知らない」という方がほとんどですよね。 会社を個人が買えるものだと思っていないし、売れるとも思っていない。専門性が高く、大企業がやるものっていうイメージも強いんです。

著書の第2弾である会計編「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 会計編」にも書きましたが、M&Aはマンションを買うのとやっていることはほとんど変わりません。収益マンションを3棟運営している会社を買うことと、直接、収益マンション3棟買うことに違いってあるでしょうか。
「株式会社」というのがあるかないか、「M&A」という大げさな名前がついているか否かだけです。笑

自分自身で資産価値と収益性を分析して、欲しいものを買う。やっていることは変わらないはずですが、M&Aという言葉に対するなんとなくのイメージに引っ張られがちです。

世の中にあるほとんどの会社は、パパママがやっているような規模がほとんど。

先入観を外して、まずそういうところを買ってみましょうよ、という提案をしています。マンション買うか、M&Aかっていう選択肢になっていいはずですし、
もっとM&Aが身近なものになればと思っています。

売り手側が知っておくべきことは?

ーサラリーマンに買われる側の立場の方々にお伝えしたいことはありますか?

買われる側(売り手側)として、特段何らかの知識を身に付けておく必要はないと思います。

事業がどのステージにいるかにもよりますが、前段階としては、属人的になっているビジネスの進め方を仕組み化することや、オーナーチェンジをスムーズに行うための施策は必要だと思います。

ただ、私が本の中で勧めているのは2〜3人でやってる商売を譲りましょうという話なので、そんなに難しい話にもならないと思っています。

 

ー売り手側にとっても、そんなに大げさな話ではないと・・・

実際のディールでも日経新聞の本で書かれるような、すごいノウハウが出てくるようなことはほとんどありません。普通に、「どうぞ、車売りましょう」というような。笑

とはいえ、会社を経営してきたパパママは当事者なので、「そんな簡単には」という、意識のギャップはもちろんあると思います。

さらに、彼ら売り手が慎重になることにより、売却に関わる情報が流通しづらくなるという側面もあります。

まだまだマクロ環境によるところの阻害要因も大きいですが、中小企業の売却が一般的になるにつれ、確実に売り手と買い手のマッチングは増えていくと思います。

 

ー先行事例などはありますか?

例えば、飲食店の居抜きはもう一般的になりつつありますよね。

内装が使えて、 うまくやればお客さんだけでなく、従業員がついてくることもあり得ます。

飲食店は山ほどあり、飲食店の居抜きも数が多いから、マッチングをさせるサービスやWEBサイトもたくさんあります。不動産屋さんが仲介を多く経験することで、仲介する人も慣れてきます。

そういった環境が当たり前になりつつある領域は、マッチングも比較的成立しやすくなる傾向はありますね。

一方、美容室なんかはまだまだ話を聞くことが少ないと思います。

本当にサラリーマンは買ってるの?

ー実際に、サラリーマンで活発に動かれている方は多いのですか?

たくさんいらっしゃいますね。

私のサロンに参加されているメンバーでも結構います。京都のアルミ製作会社を買いますとか。

ー 本にも出ていますよね。25歳の若者が・・・

そうそうそう。

あとは、この前xxxxの会社を、元々外資系のxxxxxという会社で働いていた
サラリーマンの方が300万くらいで買ってましたね。

xxxxxを辞めて、それだけでやると言ってましたね。そのくらい気軽なものだと思います。 
※xx=名前を伏せています

 

ー誰にでも買える、というわけではないですよね?

 
正直、10%(できる人は)いないとは思います。

できる人というのは、普通に企業の中でも、上手くマネジメントサイドに入っていくタイプだったり、ある程度の得意な能力を持ってる人でしょうね。

ただ、もし起業を考えている人がいるなら、会社がすでにあるので起業のゼロイチに比べるとリスクが少ない、という観点は知っておいてほしいですね。

 

ー起業よりもおすすめ、ということでしょうか?

 
会社、事業をゼロから作るしんどさって、やったことがないからみんな分からないだけなんですよね。

私の場合は、両方(起業も売買も)やってみて、両方やったからわかるようになりました。

本には、すべて本音で包み隠さず書いています。自分で言うのもなんですが、 千円くらいで買えるってめちゃめちゃ楽だなっと思いますよ。笑

なぜなら、私がベンチャーキャピタル時代に、 会社のお金を使わせてもらって経験した案件や、 何億もの投資金額を使いながら培ってきたノウハウや考え方を開示してるに近いので。笑

ー少しずつ、M&Aが身近になってきた気が・・・
中編では、東京と地方の違いについて迫っていきます。

 

▼中編・後編の記事はこちら▼

取材・インタビュアー:M&A通信・事業承継通信社/若村 雄介・柳 隆之

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