- 会社名
- 株式会社甚べい(北海道苫小牧市)
- 事業内容
- 弁当の製造・販売
- M&A検討理由
- 後継者不在のため/主要スタッフ退職による不安/事業継続への責任感
- M&A実行後
- 事業を承継後、創業者は現役を引退
- 譲渡先
- 株式会社PLUS2
- 譲渡スキーム
- 株式譲渡
北海道苫小牧市で半世紀にわたり地域密着の弁当事業を展開してきた「甚べい」。創業50年の節目に、地元で愛されてきた味を守るため、株式会社PLUS2へ全株式を譲渡しました。3代目社長・今田様が語る、事業承継の背景とその決断のプロセスをご紹介します。
高品質な米と健康志向で築いた信頼
甚べいは、創業当初から新潟産コシヒカリを使用するなど、素材にこだわった弁当づくりを徹底。日々自ら試食を欠かさず、「健康を害さない食を市民に届ける」という理念のもと、地元に根づいた事業を展開してきました。
「他の弁当屋より少し上質なものを提供したいという想いがあった」と語る今田様。地域に愛される店づくりを大切にしながら、会社を育ててこられました。
現場から社長へ、経営者として直面した幾多の試練
今田様は、甚べいにアルバイトとして入社後、正社員を経て経営に携わるように。創業社長の経営難により、2代目が一時引き継ぎましたが、その2代目から「辞める」と突然告げられ、3代目社長を任されることに。
株式もほぼすべてを引き継ぎ、責任を一手に担うこととなりました。
出店を重ねながら順調に成長を遂げていた甚べいですが、リーマンショックで大打撃を受けます。店舗売上が半減し、その後も新型コロナの影響で追い打ちを受ける苦境に。
「20年を振り返ると、後半15年は本当に厳しかった」と語る今田様。中でも、長年支えてくれた右腕の退職は大きな転機となりました。
社内の変化と将来への不安
主力メニューを開発してきた右腕の退職後、社内で新たな商品開発を試みるも、なかなか成果が上がらない日々が続きました。
「新しいことをやろうと思っても、この年齢で成功するまで続けられるのか。不安だった」ー 自らの限界を感じ、将来のために何らかの決断が必要だと考えるようになったそうです。
手数料の壁を越えてたどり着いた選択肢
複数の仲介会社と接触する中で、「最低報酬2000万円」といった提示に驚かされたといいます。「この規模の会社にそれだけ支払うのは現実的ではなかった」と振り返ります。
そんな中、紹介を通じて出会ったのが事業承継通信社でした。月1回の丁寧な面談を通じて信頼を深め、サポートを受ける決断をされました。
理解ある譲渡先との出会い
譲渡先となった株式会社PLUS2は、ラーメン「麺や虎鉄」を展開する外食企業。今田様のビジョンや甚べいの歴史を丁寧に汲み取り、事業の継続を前提に承継を引き受けてくれました。
「自分の考えを理解してくれる相手だった。それが何よりもありがたかった」ー 信頼する仲介者の勧めもあり、安心してバトンを渡すことができました。
肩の荷を下ろし、新たな一歩へ
株式譲渡が無事に完了した今も、「実感はまだ湧いていない」と話す今田様。ただ、「これで少しは肩の荷が下りるかもしれない」と、静かな安堵の表情を見せてくださいました。
「家族は、早く辞めろとずっと言っていたので、ようやく喜んでくれました」と笑顔もこぼれます。
最後に、後継者不在に悩む経営者へ向けて、こんなメッセージが寄せられました。
「うちのように、息子がいるわけでもなく、後継者がいない会社にとって、第三者承継は現実的な選択肢。そこに一歩踏み出せるかは、社長自身にかかっていると思います。」
インタビュー動画はこちら
今田様ご本人が語る、創業からM&Aに至るまでの思いや背景について、動画でご覧いただけます。